中東情勢の緊迫化が化学製品供給に波及、水道水消毒剤の入札不調が発生
中東情勢の緊迫化が、石油製品への直接的な影響を超え、日常生活に身近な分野にも思わぬ余波を及ぼしている。一部の自治体では、水道水の消毒に不可欠な化合物の入札に参加者がなく、不調に終わる事態が発生した。関係者は、11日に始まる米国とイランの直接協議の行方を注視している。
福岡市で水道水消毒剤の入札が不調に
福岡市水道局では、3月17日に実施された次亜塩素酸ナトリウムの入札が不調に終わった。この化合物は水道水の消毒に欠かせないもので、担当者は「ここ数年では初めての事態」と驚きを隠さない。業者側は、長期にわたる安定的な製品納入が見通せないとして、入札への参加を見送ったという。市は契約期間を半年から1か月に短縮し、今月3日の再入札で確保にこぎつけた。
化学プラントの稼働抑制が連鎖的に影響
市や化学メーカーなどの関係者によると、ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、原油由来のナフサ供給が懸念されている。これにより、ナフサから製造されるエチレンの生産が落ち込み、メーカーではプラスチックの一種である塩ビ樹脂などの工場稼働を抑制。その結果、塩ビ樹脂の製造過程で使用される塩素の生産が抑えられ、塩素から作られる次亜塩素酸ナトリウムも減産に追い込まれた。
山口県などに工場を持つ化学メーカーの広報担当は、「次亜塩素酸ナトリウムが逼迫している状況ではない」としつつも、「化学プラントは全体のバランスをとりながら生産を行っている。一つの供給を絞ると、他の製品も稼働を落とさざるを得ない」と説明する。
医療用ガス供給にも懸念が広がる
国土交通省水道事業課は、地方で次亜塩素酸ナトリウムの入札不調が起きていることを把握しており、今後、情報収集にあたる方針だ。同課は「石油製品だけでなく、間接的に他の化学製品などの入手が難しくなる影響も懸念される」と指摘する。
九州一円の病院などに医療用ガスを販売する「福岡酸素」(福岡県久留米市)は、MRIの稼働に使われるヘリウムや、医療器具の滅菌に必要な酸化エチレンの供給状況を注視している。ヘリウムは中東からの輸入が多いが、同社が仕入れているのは主に米国産で、「現段階で深刻な心配はない」とする。しかし、医療機関からは「必要な時に供給してもらえるのか」との問い合わせもあるという。酸化エチレンも先行きは不透明だが、現時点では前年並みの供給が維持されている。
同社の担当者は「医療は人命に関わるので、患者に影響が出ることは避けたい。米イランの協議が順調に進み、情勢が改善に向かってほしい」と願っている。
福岡市水道局は、5月以降の製品確保に向け、早急に入札を行う方針だ。担当者は「今後の状況が不透明で心配だ。中東の情勢が早く落ち着いてほしい」と語り、国際情勢の安定を切に望んでいる。



