ヨルダン川西岸で入植者襲撃が急増、住民は「ミサイルよりも恐怖」と訴え
ヨルダン川西岸において、イスラエル人入植者によるパレスチナ人集落への襲撃が深刻な勢いで増加している。現地からの報告によれば、2026年2月から3月までのわずか2ヶ月間で、襲撃は計940回に達し、9人が殺害され、44人が負傷した。自治政府の統計が明らかにしたこの数字は、地域の緊張が極限に高まっている実態を浮き彫りにしている。
「復讐」と書かれた壁、数百人来襲の村も
襲撃は組織的かつ暴力的な様相を呈している。西岸北東部のディール・アルハタブ村では、3月22日の夕方、数百人規模の入植者が集落に押し寄せた。彼らは家2軒と車9台に放火して全焼させ、14人に負傷を負わせた。現場の家の壁にはヘブライ語で「復讐」との文字が残されていた。これは前日に起きた、入植者の車とパレスチナ人の車の衝突事故で18歳の入植者少年が死亡したことへの報復と見られている。
放火で家を失った大学教員のブルハーン・オマルさん(59)は、「入植者の狙いは暴力でパレスチナ人を追い出すことだ。我々は決して土地を去らない」と強い決意を語った。彼の言葉は、土地をめぐる根深い対立が、日常的な暴力に発展している現状を象徴している。
銃撃や放火が日常化、住民は夜も眠れず
襲撃は夜間を中心に繰り返され、住民の生活を脅かしている。アブー・ファラハ村では、3月8日の未明に約100人の覆面姿の入植者が車で到着。銃や棒で武装した彼らは集まった村人に向けて発砲し、ファレア・ハマエルさん(57)とサーエア・ハマエルさん(24)を殺害、さらに15人を負傷させた。この混乱の中で、イスラエル兵が撃った催涙弾によりムハンマド・ムラさん(55)も死亡する悲劇が起きた。
村人たちによれば、入植者は毎晩のように集落に侵入し、オリーブの木を引き抜いたり、家や車に放火したりしているという。建設作業員のアブドルラヒーム・ラジーブさん(43)は、妻と子供5人で現場近くに住むが、「ミサイルよりも入植者の襲撃が怖くて夜も眠れない」と本音を漏らす。イランからのミサイル飛来を告げる警報が時折鳴り響く中でも、より身近な暴力への恐怖が生活を支配している実情が窺える。
軍の非難も効果なく、暴力は止まらず
イスラエル軍のエヤル・ザミール参謀総長は3月18日、入植者を非難する声明を発表し、「戦争の中で軍に損害をもたらす」と警告した。しかし、この批判にもかかわらず、入植者が訴追されることはほとんどなく、暴力行為は収まる気配を見せていない。背景には、イスラエルとイランとの軍事衝突による混乱に乗じて、入植者らが土地の収奪を進めようとする動きがあるとの見方も根強い。
ディール・アルハタブ村を視察した自治政府ナブルス県のガッサーン・ダグラス知事は、「パレスチナ人こそが土地の所有者だ。よそ者の入植者に抵抗を続ける」と断言し、継続的な抵抗の意思を示した。この発言は、土地をめぐる争いが単なる衝突を超え、存在そのものをかけた闘いへと発展していることを物語っている。
現地では、オリーブ畑に立つパレスチナの旗が、血痕の付いた石の間に翻る光景が残る。襲撃の激化は、和平の道筋が見えない中、住民の苦悩を深め、地域全体の不安定化を加速させている。国際社会の注目が集まる中、早期の解決が求められるが、現実は厳しい状況が続いている。



