2026年6月11日に開幕するサッカー・ワールドカップ(W杯)北中米大会に、イラン代表チームが臨む。「敵国」である米国でのプレーに、世界中の関心が集まっている。サッカーはイランでも大人気のスポーツだが、近年代表チームは「政治化」し、選手の立場は揺れ動き、複雑な思いを抱くファンも少なくない。
「ミナブ168」の愛称に込められた意味
イラン代表チームは今回、「ミナブ168」という愛称を付けられた。ミナブはイラン南部の都市の名前だ。米国とイスラエルが攻撃を開始した2月28日、この街の小学校が攻撃を受け、多くの子どもたちが命を落とした。168は、広く伝えられている犠牲者の数である。
イランメディアによると、トルコで3月27日に行われたナイジェリアとの親善試合では、試合前に整列したイランの選手たちの胸元に、小さな通学用バッグが掲げられた。この行動は、空爆で亡くなった少女たちを追悼する意図があったとされる。
政府の意図と国際社会の反応
イラン政府のW杯関連組織の幹部は、「殉教した子どもたちの記憶、そして米国の犯罪を、スポーツの場においても確実に語り継いでいかなければならない」と説明した。米紙ニューヨーク・タイムズなどは、米軍が軍施設を狙って誤爆した疑いを報じている。イラン政府は、この悲劇を国際社会にアピールする機会と捉えている。
同時に、国内向けには「戦時下」で国民の団結を促す狙いもあるとみられる。サッカーという国民的スポーツを通じて、愛国心を高めようとする意図が感じられる。
翻弄される選手たちの立場
代表チームと選手たちは近年、微妙な立ち位置に置かれている。2022年には、イスラム国家で女性に義務付けられているヒジャブ(ヘジャブ)の着用方法をとがめられ、警察に拘束された若い女性が死亡する事件が発生。これに対して大規模な抗議デモが起きた。
前回のカタールW杯開催時にも、選手たちはデモへの連帯を示す行動を取るかどうかで揺れた。一部の選手は国歌斉唱を拒否し、国外でのプレーを選ぶ者も出た。今回のW杯でも、政治とスポーツの狭間で選手たちの葛藤は続いている。
イラン代表のW杯出場には約19億円の賞金がかかっており、政府の関与も大きい。異例の共催となった今回の大会は、開幕前から混乱を極めている。



