ゼンリン、次世代車「SDV」対応に本腰 ナビアプリ市場でグーグルと激戦へ
カーナビゲーション向け地図で国内最大手のゼンリンが、次世代の自動車に位置づけられる「SDV」化への対応を急いでいる。従来型の車載専用ナビに代わり、ナビをアプリの一つとして利用する「ディスプレーオーディオ」の普及が急速に進んでいるためだ。この新たな市場では、米グーグルが強力なライバルとなることが予想され、ゼンリンは開発に力を入れている。
自社開発ナビアプリを初めて提供
ゼンリンは2026年3月、初めて自社開発したディスプレーオーディオ向けナビアプリの提供を開始した。通信機能により高頻度で最新の機能や情報を取り込めるのが特徴で、日産自動車の新型電気自動車「リーフ」の一部グレードで採用された。日産が設定する月額サービス料の一部がゼンリンの収入となる仕組みだ。同社はSDV化の加速を見据え、他の車種などでの導入に向けて積極的な売り込みをかけている。
住宅地図で知られるゼンリンは、1990年にカーナビ向け地図市場に参入した。パナソニックなどのナビメーカーに地図データを販売する事業を展開し、メーカー側はこのデータを基に操作性やデザイン性など独自性のあるナビソフトを開発して機器に搭載している。
ゼンリンは出荷台数に応じた収入を得ており、約7割のシェアを維持している。同社のナビ事業の売上高の99%をこの従来型向けが占めるが、市場が大きく変化を見せ始めている。
従来型ナビ市場が縮小、ディスプレーオーディオが急成長
電子情報技術産業協会によると、従来型ナビの2025年下半期の国内出荷台数は約132万台で、前年同期と比べて12.3%減少した。一方、ディスプレーオーディオは47.5%増の約37万台と大きく伸長した。ナビ以外にも音楽配信など好みのアプリを選んで使用でき、本体価格が従来型より比較的安価なことが人気の理由となっている。
ゼンリンにとっては、競合環境も大きく変わる。数社の寡占となっている従来型ナビへの地図データ販売とは異なり、アプリ市場では国内外のIT企業も競合相手となる。市販のディスプレーオーディオはスマートフォン用の多様な地図アプリをそのまま表示できる製品も多く、日産のリーフでは、利用者がグーグルマップのナビを選べるプランも用意されている。
精密な地図データを強みに、新たな開発力が鍵
ゼンリンは素材としての地図データの正確性や情報量という強みを生かしていく戦略を掲げるが、自社開発するアプリでは、操作性やデザイン性も含めたユーザー目線での完成度が求められることになる。
「ナビ業界の事業環境が大きく変化している」と説明するゼンリンの内野靖司・モビリティソリューション事業本部長は、「自動車が通信することが当たり前になり、環境が大きく変わった」と強調する。その上で、「精密な地図データは引き続き強みとなる。SDV化により、位置や地図情報も使って多様なサービスを生み出そうとしている自動車メーカー側のニーズにも応える開発力を付けていきたい。将来的には自動運転車への対応も進めていく」と語っている。
SDVとは:インターネット通信でソフトウェアを更新し、機能を追加したり性能を向上させたりできる車。英語の「Software Defined Vehicle」の略称。



