住友ゴム、氷上OKの全天候型タイヤ「シンクロウェザー」が市場開拓
住友ゴム、氷上OKの全天候型タイヤが市場開拓

住友ゴム工業が開発した「シンクロウェザー」は、氷上での国際的なブレーキ性能試験に合格した世界初のオールシーズンタイヤです

気温や湿度に応じてゴムの硬さが変えられる独自技術を搭載し、夏でも冬でも走れる「二刀流」のタイヤとして、新たな市場の開拓に挑んでいます。

開発のきっかけは約10年前、社内で商品の技術革新を模索する中、材料開発本部の研究員から「全天候に対応できるタイヤができないか」と提案があったことです。従来のオールシーズンタイヤは、凍結路面で十分な性能が発揮できないものが多く、「スタッドレスタイヤの代わりにはならない」と言われていました。これは、高温になると軟らかくなり、低温だと硬くなるゴムの性質が影響していました。

研究チームが目を付けたのは、タイヤに含まれる特定の材料でした。この材料同士の結びつきが水に反応すると緩くなる性質を応用すれば、タイヤも水に触れると軟らかくなり、乾くと戻るのではないかと考えました。さらに、氷上でも硬くなりにくいタイヤにするため、素材開発に着手しました。

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しかし、どのように実現するかは手探りでした。上層部からは「まだ、できないのか」とプレッシャーがかけられる中、材料開発本部主査の大野秀一朗(43)は「希望するような結果が本当に出るのか、不安しかなかった」と振り返ります。未知の世界だけに、大野らは地道に調べるしかありませんでした。

タイヤ用のゴムに配合されている数十種類の材料の配分を変えたり、新しい素材を入れたりして、試作品を作っては水につけ、低温にさらし、一つひとつ性能を検証しました。約7年にわたる試行錯誤の結果、氷上でスタッドレスタイヤと同等のブレーキ性能を実現しました。

一方、販売部門では「目に見えない性能をどのように伝えるか」という問題意識が広がり、初めて「認定店制度」を導入しました。販売店の担当者に約2時間の講義を受けてもらい理解度を確認したほか、乗車して新商品の性能を確かめてもらう試走会も企画し、会社が認定した店舗を中心に販売しました。

しかし、これまで夏用と冬用のタイヤの付け替え時がかき入れ時だった販売店からは「売り上げが減ってしまうのではないか」との不安の声も少なくありませんでした。国内販売企画を担当する松村尚典(30)は「需要を平準化することで利益を安定化できることなど、丁寧に説明した」と話します。

2024年10月に販売を始めると、テレビCMに米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手を起用した効果もあり、店頭で「指名買い」する客が出るほどの人気を集めました。流行に敏感な消費者への認知度を高めるため、東京・二子玉川の書店で商品を展示するなど、裾野の拡大にも取り組んでいます。

販売のお墨付きを与える「認定店」は全国で約2万店に増え、2025年は計画通りの売り上げを達成しました。タイヤのサイズのラインアップを拡充しており、2026年は前年の倍以上の販売を計画しています。

製品のさらなる改良にも取り組み、グリップ性能と耐摩耗性能を高いレベルで両立できる技術を開発中です。実現すれば、不整地も走れる大口径なオフロードタイヤにも展開できるといいます。「日本では、タイヤを夏用と冬用で分けるのが当たり前だったが、新たなカテゴリーを自分たちで切り開き、大きくしていきたい」と松村は前を見据えています。

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住友ゴム工業は1909年、英ダンロップ社の工場として創業。1913年には国産第1号の自動車用タイヤを製造しました。1963年に現社名となり、2025年には欧州や北米などで四輪タイヤの「ダンロップ」商標権を取得しました。テニス、ゴルフなどのスポーツ用品や産業品も手がけており、2025年12月期の連結売上高は1兆2070億円、従業員は約3万7600人です。