郵政民営化関連法の改正案が、今国会で成立する見通しとなりました。郵便局という拠点を維持するため、年650億円規模の公的支援が行われることから「郵政お助け法案」とも呼ばれています。なぜ今「お助け」なのか、肝心の郵便サービスはどうなるのか――。四つの疑問を解説します。
疑問1:そもそも郵政民営化法とは?
郵政民営化法は、かつて国営だった郵政事業を民営化するための基本法で、関連法と合わせて郵政民営化関連法と呼ばれます。2005年に小泉純一郎政権下で成立し、2007年に日本郵政を持株会社とし、郵便事業会社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険、郵便局会社の4社体制で民営化がスタートしました。政府は日本郵政の株式保有を3分の1超まで減らし、日本郵政が持つゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式は2017年9月までにすべて売却する計画でした。
しかし、2009年の政権交代で発足した民主党連立政権が株式売却を一時凍結。全国郵便局長会の支援を受け、民営化の見直しが進められました。2012年の法改正では、ユニバーサルサービスの対象を銀行と保険にも拡大し、金融2社株は「できる限り早期」に処分することとされました。今回の改正はそれ以来14年ぶりの本格改正です。
全国郵便局長会は、前回の改正で実現しなかった二つの要望(日本郵政が金融2社株の3分の1超を保有し続けること、郵便と郵便局の事業会社を日本郵政に統合すること)に加え、郵便局維持コストの国負担を求めてきました。局長会は約1万8千人の現役郵便局長で構成され、参院選では組織内候補を擁立。自民党がその受け皿となり、法改正議論が進められました。
疑問2:年650億円の公的支援の根拠は?
今回の改正案では、各地の郵便局を維持する費用の一部を日本郵便に交付する仕組みを国が創設します。財源は日本郵政からの配当金と古い郵便貯金の権利消滅金で、年650億円規模を見込んでいます。郵便局の窓口事業収入の9割は銀行、保険、郵便の3事業からの手数料ですが、利用実績に応じた手数料は減少傾向にあります。一方、新たな公的支援は必要な郵便局数の人件費などを基に算出されるため、利用者が減っても安定収入が得られます。人口減やデジタル化で利用者が減少していることが理由ですが、日本郵便で不祥事が相次ぐ中での支援には批判もあります。
疑問3:ゆうちょ・かんぽ株「当分」保有とは?
改正案では、日本郵政が金融2社株を「できる限り早期」に全処分する規定は残しつつ、「当分の間」は3分の1超の保有を義務付けます。「当分」の期間は、日本郵政が株を手放しても銀行・保険サービスが維持できると確認されれば見直し可能で、3年ごとに郵政民営化委員会が検証します。最初の検証は2027年春です。
疑問4:肝心の郵便事業はどうなる?
今回の法改正は郵便局の拠点維持が主眼で、郵便サービスそのものの持続性はほとんど議論されていません。しかし、郵便物数の減少で業績が深刻化しているのは郵便事業です。日本郵便はさらなる郵便料金値上げを検討しつつ、配達日数やポスト設置基準などのサービス水準見直しも模索しています。需要が縮小する郵便サービスをどう維持・縮小するか、利用者にとって最も重要な議論はまだ始まっていません。



