政府、石炭火力発電の稼働増を決定 中東情勢緊迫化でLNG節約へ
経済産業省は2026年3月27日、石炭火力発電の稼働を同年4月から1年間に限り増加させる方針を固めた。この決定は、中東地域からの液化天然ガス(LNG)供給に懸念が生じていることを受けた緊急措置であり、脱炭素政策の一時的な後退を意味する。
中東情勢の長期化を念頭に置いたエネルギー政策の転換
経産省は同日開催された審議会において、委員からの了承を得て正式に決定した。同省は現時点で電力供給への直接的な支障は想定していないと説明しているが、イラン情勢の長期化を考慮し、予防的な措置として石炭火力の活用を拡大する。
石炭火力発電は、日本の発電電力量全体の約3割を占める主力電源である。これまで政府は二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目的に、石炭火力の利用を段階的に減少させてきた。具体的には2025年度から、低効率の旧型設備の稼働率を年間50%以下に制限する規制を導入する予定だった。
LNG節約効果と供給リスクの軽減
今回の措置では、この規制を1年間停止し、石炭火力の稼働率を引き上げる。経産省の試算によれば、石炭火力の利用拡大により、年間約50万トンのLNGを節約できる見込みだ。これは日本が輸入するLNGのうち、封鎖が続くホルムズ海峡を経由する約400万トンの1割以上に相当する。
石炭の輸入先は主にオーストラリアやインドネシアが中心であり、中東産の割合が高いLNGや石油に比べて、イラン情勢の影響を受けにくい利点がある。この地理的な供給リスクの低さが、今回の政策転換の背景にある。
脱炭素政策の一時的な後退と今後の課題
政府はこれまで、CO2排出量の多い石炭火力への依存度を下げる方針を堅持してきた。しかし、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー安全保障の観点から、脱炭素政策を一時的に後退させる判断に至った。
今回の決定は、エネルギー供給の安定性と環境政策のバランスをいかに取るかという課題を浮き彫りにしている。経産省は、1年間の限定措置としているものの、今後の国際情勢やエネルギー市場の動向によっては、政策の見直しが続く可能性もある。
日本のエネルギー政策は、再生可能エネルギーの拡大と並行して、化石燃料のリスク管理にも直面している。今回の石炭火力稼働増は、そうした複雑な状況下での現実的な選択肢として位置づけられる。



