市街地への出没が相次ぐクマについて、環境省は全国で統一的な手法を用いた個体数調査に初めて乗り出す。頭数の把握は、適正な捕獲数の設定や対策の効果を推し量る上で根幹になるデータだ。近年のクマによる被害の深刻さもあいまって、より実際に近い頭数を割り出す研究が進んできた。
政府の対策と統一調査の背景
クマによる被害を受け、政府は昨年11月にクマ被害対策パッケージを公表した。捕獲の強化や人材育成などの対策を示し、中期的な取り組みとして「適切な個体数管理のための統一的な手法による個体数推定」を掲げた。これまで各都道府県や個体群に基づいた地域ごとに調査が行われてきたが、手法が異なり、推定個体数は統計モデルを用いて算出されてきた。
現状の推定個体数
環境省によると、各都道府県の推定個体数(中央値)を合計すると、ヒグマとツキノワグマを合わせて全国で計5万7793頭。内訳は北海道1万1600頭、東北1万9237頭、関東2983頭、中部1万7553頭、近畿・中国6420頭。四国は二十数頭とされ、九州・沖縄には生息していない。個体数は全国的に増加傾向にある。
従来の調査手法
これまで行われてきた調査手法には、以下のようなものがある。
- カメラトラップ法:画像から胸の模様で個体識別
- ヘアトラップ法:体毛からDNAで個体識別
- 捕獲個体標識法:マイクロチップ挿入などで個体識別
- 目撃件数、被害件数、許可による捕獲数
- 狩猟の報告
ツキノワグマの胸にある模様は個体ごとに異なるため、個体識別に用いられる。兵庫県立大学の横山真弓教授(野生動物管理学)は「大前提として、とにかくデータが少ない。限られたデータから統計モデルでやらざるを得なかった」と語る。
今後の課題
統一手法による調査は、より精度の高い個体数把握を目指す。しかし、広範囲でのデータ収集や、地域ごとの生態の違いをどう考慮するかなど、課題も多い。環境省は2026年度からの本格実施を目指しており、結果はクマ対策の根幹を支えると期待される。



