前橋市千代田町に位置し、70年以上にわたり地域に親しまれてきた百貨店「スズラン前橋店」が、2026年11月30日をもってその営業を終了することが、運営会社である「スズラン」(前橋市)より2日に発表された。厳しい経営環境に加え、店舗設備の老朽化が進行したことが、この決断の背景にある。中心市街地の再開発計画に合わせて新店舗の開業を目指していたが、同事業の遅延が経営にさらなる重荷となった。今後の具体的な計画については、改めて公表するとしている。
スズラン前橋店の歴史と経営悪化の経緯
同社は1952年に設立され、長年にわたり地域の商業拠点として機能してきた。民間調査機関のデータによれば、1992年8月期の売上高は476億1300万円に達し、2002年には新館をオープンさせるなど拡大路線を歩んだ。しかし、周辺商業施設との競合激化、人口減少、中心市街地の空洞化などの影響を受け、売上高は長期にわたって減少傾向を示した。近年では営業利益が赤字となる状態が続き、2025年8月期の売上高は75億5500万円にまで落ち込み、1億8000万円の最終損失を計上するに至った。
営業終了の直接的要因
運営会社は営業終了の理由として、空調設備やエレベーターなどの老朽化が著しく、多額の設備投資が必要となった点を挙げている。また、中心市街地の再開発計画の遅れも経営を圧迫する大きな要因となった。2018年度に検討が開始された再開発事業は、基本構想段階では2024年度の着工を予定していたが、幾度かの計画変更により2026年度に延期。さらに近年の建設費高騰を受け、着工は2027年度以降にずれ込む見通しであり、完成時期も2030年度から変更される可能性が生じている。
再開発計画と新店舗の行方
現店舗の敷地を活用し、市立図書館本館やオフィスが入居する複合施設にスズランの新店舗を設置する計画が進行中であった。しかし、計画見直し中の準備組合は「スズランの関与の仕方についても協議中」と述べており、不透明な状況にある。同社は前橋市からの強い要請を受け、再開発への全面的な協力を約束したと説明する一方、新店舗に関する具体的な計画については「再開発の進捗に応じ、時機をみてお知らせする」と述べるにとどめている。
地元経済界の反応と今後の課題
今回の営業終了発表を受け、地元経済界からは中心市街地の将来に対する懸念の声が上がっている。前橋中心商店街協同組合の植木修理理事長は「残念な気持ちでいっぱいだ。再開発も厳しさを増しており、市がどれだけの覚悟を持って事業を推進するかが重要になる」と語った。また、前橋商工会議所の金子昌彦会頭は「中心市街地における最大の集客力を失うことになる。行政、経済界、市民が一体となり、まちづくりを推進していく必要がある」とコメントし、地域全体での取り組みの重要性を強調した。



