東京芸術劇場「ボンクリ・フェス」が最終公演へ 自由な音楽の遊び場としての8年間
世界の最新音楽潮流を紹介するユニークな音楽祭「ボンクリ・フェス」が、東京芸術劇場(池袋)主催としては最後の公演を3月1日に迎える。初回からアーティスティック・ディレクターを務めてきたイギリス在住の作曲家、藤倉大(48)に、このフェスの思いや目指した姿を聞いた。
「音楽ファースト」の哲学と子供も楽しめるフェス
「ボーン・クリエイティブ」を略した「ボンクリ」は2017年に同劇場で初開催され、今年で8回目を数える。藤倉は「僕はいつでも音楽ファースト。音楽はマネタイズするものじゃない」と語り、高尚な理念を掲げず、自分の音楽美学の実現よりも「子供も楽しめるフェス」を目指してきた。電子音楽から邦楽まで幅広いジャンルの最先端を紹介し、新しい音を好きになるのにルールはいらないという姿勢を貫いた。
フェスでは、簡単な電子楽器を子供が自作するイベントなど、体験を通して新しい音楽に触れられる機会を積極的に作ってきた。藤倉は「僕はあくまで作曲家。面白いと思うことをやっている音楽家に広く声をかけただけ」と謙遜するが、次第に口コミで評判が世界中に広がり、面識がない海外の音楽家から「出たい」というメールが来るようになった。
未知の音響体験と遊び心が真骨頂
今回の出演者も一風変わっている。弦楽器と電子音響を融合させた独自の音楽を追求するポーランドの「ネオ・カルテット」や、民俗色と革新性を併せ持つスロバキアの現代音楽集団「クエーサーズ・アンサンブル」など、未知の音響体験が味わえるだろう。
電子音楽による即興を得意とするノルウェーのヤン・バングのコンサートでは、ギタリストで作曲家の大友良英とともに藤倉も参加し、シンセサイザーを担当する。「以前は即興が苦手だったけれど、勧められて参加するうちに面白くなってきた」と振り返る。こうした遊び心こそが、このフェスの真骨頂だった。
藤倉は「音楽を純粋に楽しむ気持ちがあれば何でもオーケー。毎年行き当たりばったりで続け、音響や照明のチームとも仲良くなれたのが収穫」と語る。また、「お金もうけが目的ではないから自由にできた。今後、別の場所でも開くことができたら」と新展開に含みを持たせた。
当日のプログラムと藤倉の本業での活躍
最終公演当日は午前10時半から午後8時まで、劇場内の各所でコンサートやワークショップ(体験講座)などが開かれ、無料プログラムも用意されている。問い合わせは電話0570-010-296まで。
一方、藤倉の「本業」では、葛飾北斎を主人公にしたオペラ「The Great Wave」が今月12日、英国・グラスゴーのスコティッシュ・オペラで初演された。藤倉にとって4作目のオペラで、ハリー・ロスの台本を宮城聰が演出した舞台は、謎めいた北斎の生涯を鮮やかに描き出し、美しい音楽とあいまって現地メディアの注目を集めた。日本での上演が待ち遠しい。
ボンクリ・フェスは、自由な音楽の遊び場としての精神をぜひ継承してほしいと願う声が多く寄せられている。



