記憶喪失と過去の謎、二人の女性が追う「ツネタ」の正体とは?軽妙な人間ドラマ
記憶喪失と過去の謎、二人の女性が追う「ツネタ」の正体

漫画『ツネタ』(ソウヤ・ブン著、KADOKAWA、上下各968円)は、二人の女性が“ツネタ”なる人物を追う物語である。一人は20年前の事件の証拠品の行方を知りたい警察官のトバ。もう一人は記憶を失い、持っていた免許証の名前が常田だったことから、自分がツネタなのか、どんな人間だったのかを探る女性だ。彼女たちは別々の方向から“ツネタ”に迫っていく。

ハードな事件とソフトな心情が織りなす物語

記憶喪失、警察の汚職、過去と現在が交錯する本作は、一見ハードな内容だが、そこに絡むのは人の心情の柔らかさである。作中では繰り返し、人の記憶と感情のあいまいさが描かれる。トバの上司は何を思って部下に仕事を任せたのか? 常田の中学校の担任が覚えていたエピソードは本当に常田のものなのか? 物語は複雑に重ねられながらも、登場するキャラクターたちがそれぞれ多様な面を持ち、世界を優しく包み込む。

トバの葛藤と常田の模索

50歳手前のトバは、黒髪をさらりと揺らし、酸いも甘いもかみ分けたデキる警察官の雰囲気を持つ。しかし心は常に懸命で、過去の迷いを忘れきれず、今さら昔の事件の証拠品の行方を気にせずにはいられない。さらに、家族のカヤちゃんと長年暮らしながらも、相手の気持ちを推し量れずすれ違う。淡白な線で描かれたかっこいい大人たちが、生きる中でできたわだかまりを解こうとじたばたする姿には、不確かさやあいまいさに折り合いをつけようとするいじらしさが感じられる。

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一方、記憶喪失の常田は、偶然出会った青年・益井を巻き込み、自分が自分である確かさを求めて動く。二人が追うツネタから引き出されるのは、本当にそれぞれが求めていた真実なのか。過去を追っているようで、実は今の自分と向き合っているのではないかと、物語は紡がれる。

乾いたかっこよさと人間の揺らぎ

本作は、乾いたかっこよさを見せつつも、生活、仕事、暮らしを織り交ぜて人の揺らぎを軽妙に柔らかく描く。そのバランスが心地よい。作者ソウヤ・ブン氏は2024年に「月刊コミックビーム」で「くゆるね」を掲載しデビュー。2025~26年に同誌で「ツネタ」を連載し、本作が初単行本となる。

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