是枝裕和監督が政府のコンテンツ支援策を批判 「歴史軽視では優れた作品も作り手も生まれない」
是枝監督がコンテンツ支援策を批判 「歴史軽視では作品も生まれない」

是枝裕和監督が政府のコンテンツ支援策に苦言 「歴史軽視では優れた作品も作り手も生まれない」

2026年4月4日、映画監督の是枝裕和氏が政府のコンテンツ産業強化策を批判する発言を行った。コンテンツ産業官民協議会の会合において、是枝監督は国の戦略の一部に疑問を投げかけ、特に映画保存施設への予算不足を指摘。「『歴史』を大切にしない国から優れた作品も作り手も生まれて来ない」と強い懸念を示したのである。

政府のコンテンツ産業強化戦略と是枝監督の批判点

政府は2024年、コンテンツ産業を自動車産業などと並ぶ「基幹産業」に位置づけ、2033年までに海外売上高を20兆円とする目標を掲げている。日本発のアニメやゲームが世界的な人気を博していることが背景にあり、経済産業省は今年3月、コンテンツ開発支援事業「IP360」の公募情報を公開した。この事業は、国際的に人気を得て関連グッズ販売などでも利益を上げられる作品の創出を目的としている。

しかし、是枝監督はIP360が支援対象とする実写映画を製作費8億円以上の作品に限定している点を問題視。邦画ではミニシアター系映画の製作費が1億円以下がほとんどであり、8億円以上は大手が手がける大作に限られる。総務省の資料によれば、2018年頃に製作された邦画438本の総製作費は1577億円で、1作品あたりの平均製作費は約3.6億円となる計算だ。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

是枝監督は「最も支援を必要としている次世代の才能に対し、空白地帯が生じてしまうのではないかと危惧しています」と指摘。昨年度まで実施されていた3億円以上の作品への支援事業「JLOX+」がIP360に取って代わられたことで、中小規模の作品への支援が手薄になる可能性を懸念している。

映画保存施設への予算不足も指摘

さらに是枝監督は、日本で唯一の国立映画保存施設への予算が韓国の類似機関の半分程度であることにも言及。映画の歴史的資料やフィルムの保存・修復が十分に行えない現状を「歴史を軽視する姿勢」と批判した。この発言は、文化的遺産としての映画を大切にしない国では、長期的な視点で優れた作品や創造的な人材が育たないという警告を含んでいる。

コンテンツ産業官民協議会は2日に開催され、アニメ制作者や映画関係者らが委員として参加。議論内容の大部分は非公表とされたが、是枝監督を含む数人の委員の提出資料が報道陣に公開され、政府戦略への批判的な見解が明らかになった。

専門家の見解と今後の課題

批評家で日本映画大学准教授の藤田直哉氏は、政府がコンテンツ産業に力を入れる戦略的な意義を認めつつも、是枝監督の指摘には重要な視点があると評価。ソフトパワーや経済的成功を追求する一方で、多様な表現や次世代の育成をどう支えるかが課題だと指摘している。

政府のコンテンツ産業強化策は、国際競争力の向上や経済効果を重視する一方で、是枝監督が指摘するように、芸術的・文化的な側面や歴史的保存への配慮が不足している可能性がある。今後の政策議論では、産業振興と文化的価値のバランスをどう取るかが焦点となりそうだ。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ