「だって風がちがうもん」全盲園児との思い出を絵本に 90歳元園長の物語
「だって風がちがうもん」全盲園児との思い出を絵本に

愛知県春日井市の柏井保育園で、障害の有無に関係なく子どもたちが共に学ぶ「インクルーシブ保育(統合保育)」を先駆けて実践した元園長の浅井順子さん(90)が、全盲の園児との思い出を綴った物語「だって風がちがうもん」を絵本として出版することになりました。浅井さんは「自分は見えているのに、本当は見えていなかった」と気づかされたエピソードなどを通じて、園での日常を生き生きと描いています。

インクルーシブ保育の先駆け

柏井保育園は、社会福祉法人「柏井会」が運営する認定こども園で、桂林寺の敷地内にあります。住職の母でもある浅井さんは名古屋大学教育学部を卒業後、2002年まで21年間にわたって園長を務め、その後は昨年6月まで法人理事長として尽力しました。

保育の責任者だった1974年、障害児の母親たちの要望を受けて、東海地方の保育園で初めて心身障害児学級を開設しました。当初は障害のない園児と一緒におやつを食べる時間を少しずつ増やす試みを続けていました。ある日、学級の前を通った女の子から「どうしてみんなと一緒に食べないの?」と質問され、浅井さんはハッと気づかされました。年度初めで落ち着かないからと全ての活動を学級内で行っていましたが、「初めから分けてしまったら、心の交流なんて育ちようがない」と考え直し、2年後には当時全国でも珍しかったインクルーシブ保育に移行し、異なる年齢の縦割り学級も取り入れました。

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絵本出版への経緯

浅井さんは昨年1月、新聞広告で「第29回えほん大賞」(事務局・文芸社)の作品募集を知りました。「私は保育ばか。園から離れたら何をしよう」と考えていた時期で、保育士向けの講演会で話していた内容を基にストーリー部門に応募しました。6月に落選を確認した浅井さんは、今後の参考にしようと「どこが悪かったのか教えてほしい」とメールで問い合わせました。すると翌月、文芸社から書籍化を前提とした修正のアドバイスが届きました。同社の担当者は「メールをきっかけに原稿を読み直し、一般流通出版を提案できる内容だと判断した」と説明しています。

物語の内容

主人公は病気で視力を失った4歳児「よっちゃん」。インクルーシブ保育を行う保育園の年中組に入園したよっちゃんは、最初は柱や壁を触りながら移動していましたが、1年も経つと廊下にあるセンターラインのテープを足の指で探りながら歩くようになりました。階段まで来るとさっと方向転換をして下りていきます。不思議に思った先生が「どうしてここで曲がるの?」と尋ねると、よっちゃんは「だって風がちがうもん!」と答えました。先生は「目が見えることで感じ取れない空気の流れを感じ取っている」と驚きました。

モデルの男性の現在

主人公のモデルとなった男性は現在42歳。名古屋市港区の「名古屋ライトハウス情報文化センター」点字出版事業部で活躍しています。昨年夏、絵本の話を聞いて浅井さんに会いに行った男性は、「風の話は覚えていませんが、運動会で踊ったことなど楽しい思い出はあり、みんなが自然にサポートしてくれる場所でした。恥ずかしいけれど多くの人に読んでもらいたい」と語っています。

出版詳細

今年9月をめどに文芸社から刊行される絵本はB5判横31ページ。挿絵はイラストレーターの天野聡美さんが担当します。初版は千部印刷され、全国100書店以上で販売される予定です。

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