高齢化団地で交流促進 NPO「きやまSGK」が国土交通大臣賞を受賞
優れたまちづくりに貢献した住民組織を顕彰する今年度の「第21回住まいのまちなみコンクール」(住宅生産振興財団主催)において、佐賀県基山町のNPO法人「きやまSGK」が最高位の国土交通大臣賞に選出されました。都市部への通勤通学に便利な新興住宅地として郊外に整備された「ニュータウン」と呼ばれる団地の高齢化が各地で進む中、同団体の活動が注目を集めています。理事長の安本正雄さん(82)に、組織の概要や将来の展望について詳しく伺いました。
きやまSGKの活動内容と目的
きやまSGKは、「シニア・メイクス・グレート・基山」の略称で、基山町のけやき台地区において高齢者の健康福祉の増進や生きがいづくり、地域貢献を目的に活動しています。2016年に有志グループ「きやまSGKプロジェクト」として設立され、4年前に活動の幅を広げるためにNPO法人化しました。現在は30歳から80歳代までの59人のメンバーが参加し、多様な事業を展開しています。
具体的な活動としては、JRけやき台駅前にある拠点施設「基山SGK交流プラザ」で健康講話や運動教室を開く「健康づくり部」、子どもたちの遊びや勉強の場所、住民との交流機会を提供する「寺子屋部」など、五つの部が設けられています。また、2022年に無人化したけやき台駅の清掃や改札の管理業務も担っており、地域のインフラ維持にも貢献しています。近々開催されるイベント「食の祭典と歴史さんぽ」では、神社などを巡る企画を通じて住民同士の絆を深める機会を提供しています。
けやき台地区の現状と高齢化の課題
けやき台地区は、好景気だった1987年から1990年にかけて大手化学企業が約60ヘクタールの山林や農地を開発し、住宅団地を整備した地域です。福岡都市圏のベッドタウンとして成長しましたが、5、6年前から住民の世代交代が始まり、高齢化が急速に進んでいます。町のデータによると、2015年3月末の人口は4064人で高齢化率は18.9%でしたが、昨年3月末には人口3456人、高齢化率47.7%にまで上昇しています。
安本さんは、分譲開始から40年近く経過し、いわゆる「団地1世」が高齢化して福祉施設に入居する一方で、子どもたちが引っ越してきたり、手放された住宅を購入した新たな住民が移住してきたりするなど、住民の入れ替わりが活発化していると指摘します。最近では、定年後や老後の「第二の人生」を見据えた50、60歳代の世代が多く引っ越してくるほか、マンションに若い子育て世代が入居するようになり、新たな活気も生まれています。
高齢化社会への適応と新たな取り組み
こうした高齢化の進展に対応するため、きやまSGKは多様な活動を展開しています。お年寄りが家に引きこもってしまわないように、パソコンや絵手紙の教室、雑談を楽しめるカフェ、週末限定の居酒屋を拠点施設内で開設しています。また、2018年からは町の委託を受けて「通所型サービスB」事業に取り組み、施設内での軽い体操や合唱などを通じて介護予防にも努めています。これらの活動は、高齢化問題を抱える他地域の団地からも視察を受けるなど、高い評価を得ています。
さらに、超高齢化社会の到来に備え、昨年5月には佐賀市で訪問介護事業をスタートさせました。これは、安本さん自身が2年前に視覚障害を患った際に世話になった訪問介護のヘルパーからの相談をきっかけに実現したもので、事業所「ヘルパーステーション えんがわ」として運営されています。家族介護の機能が衰えている中、訪問介護の役割はますます重要になっており、将来的には基山町でも事業を展開し、老いても住み慣れた地元で暮らせる環境づくりに取り組む計画です。
安本正雄さんの経歴と地域への思い
安本正雄さんは福岡県飯塚市出身で、18歳で陸上自衛官になり、北海道や福岡県などの転勤生活を経て、55歳で定年を迎えました。けやき台地区には、陸上自衛隊目達原駐屯地(吉野ヶ里町)時代の1997年に新築マンションを購入して定住しました。子どもたちが独立し、70歳を過ぎた頃、長い転勤生活で近隣住民との関係が薄かった暮らし方を見直し、「きやまSGKプロジェクト」に参加するようになりました。
安本さんは、活動を通じて互いに知らない住民同士を結びつける緩衝材のような役割を果たしたいと語り、地域コミュニティの再生に力を注いでいます。高齢化が進む団地において、きやまSGKの取り組みは、住民同士の絆を深め、持続可能なまちづくりを実現するモデルケースとして期待されています。