法隆寺への熱い想いをグッズに込める観光ガイドの挑戦
奈良県斑鳩町に住む観光ガイドの豊川裕子さん(41歳)は、法隆寺への深い愛情をオリジナルグッズに込め、地元の魅力を広める活動に取り組んでいます。仏像柄の缶バッジや阿弥陀如来の光背をモチーフにしたクリアファイル、雲肘木が描かれた手拭い、そして「聖徳太新聞」など、彼女が制作したアイテムは多岐にわたります。豊川さんは「ほぼ推し活です。『ディズニーよりも法隆寺』と言う人を増やしたい」と夢を語り、その情熱は観光ガイドとしての仕事にも反映されています。
地元への帰還と法隆寺との出会い
豊川さんは広島市生まれで、2歳から父の地元である斑鳩町で育ちました。大学卒業後は東京のPR会社に就職し、企業イベントの企画などを担当してきました。結婚を機に大阪へ移住した後、2011年に斑鳩町へUターンしましたが、当初は地元愛が強くありませんでした。転機となったのは、義父母が訪ねて来た時に法隆寺へ行き、寺の歴史や大講堂の幕の模様について質問され、答えられなかったことです。祖父が寺のボランティアをしていたほど身近な場所だったにもかかわらず、自身の無知に衝撃を受けました。
この経験から、子育ての合間に「奈良まほろばソムリエ検定」の勉強を始め、法隆寺に関する本を読みあさりました。1300年前に建立された建造物の技法や仏像の美しさに魅了され、知れば知るほど法隆寺の魅力に取りつかれていきました。約7年前から観光ガイドを始め、当初は「堅苦しくて面白くない」と言われることもありましたが、身近な話題を盛り込む工夫を重ねました。例えば、金堂の釈迦三尊像を説明する際に「高校生クイズにも出題されたんですよ」と前置きすることで、仏教に詳しくない観光客にも親しみやすく伝えています。これまでにガイドした人数は約5000人に上ります。
オリジナルグッズで法隆寺ファンを拡大
法隆寺ファンの裾野を広げようと、2020年頃からオリジナルグッズの制作にも力を入れています。冠位十二階の6色を使ったモザイク柄の折り紙など、コアなファン向けのアイテムも多いですが、「『面白そう』とか、『かわいい』でもいいから、まずは興味を持ってもらいたい」と遊び心を忘れません。現在は、仏像の絵や説明が書かれたカードで遊ぶ「ぶつぞうポーカー」を制作中です。これらのグッズは、普段働く法隆寺付近の「CAFE鍼灸ZADAN」で販売されており、昨年初めて制作した「聖徳太新聞」のイラストは、親戚の漫画家・冨澤浩気さんの描き下ろしです。
豊川さんは「地元の人って、やっぱり詳しいんですね」と言ってもらえることが何よりの喜びだと語ります。今年度は町教育委員会が進める「いかるが楽」にもボランティア講師として参加し、町の歴史や文化を学ぶ機会を提供しています。かつては町の魅力に気づけていなかっただけに、「斑鳩の魅力を知らないまま、外に出るのはもったいない。子どもたちにも楽しんで知ってもらえるよう、『野良のガイド』を続けていきたい」と決意を新たにしています。



