本年度に入り、浪江町の「シャインコースト・ファーム」と田村市都路町の「全農美土里ファーム」という、大規模な畜産・酪農施設の完成や稼働が相次いでいる。これらの施設は、それぞれの特性を引き出し、東京電力福島第1原発事故からの畜産・酪農業の本格的な再生につなげることが重要である。
原発事故による畜産・酪農への影響
本県の畜産・酪農業は、原発事故により飼育が盛んだった双葉地方に避難指示が出されたことなどで大きな打撃を受けた。乳用牛の飼育頭数は震災前の約6割の1万400頭にとどまり、生乳の生産量も乳用牛の頭数と比例して4割減少している。肉用牛の飼育頭数は震災前の約8割の4万1360頭である。
両施設の効果と意義
両施設がフル稼働すると、計3980頭の乳用牛が飼育され、飼育頭数および生乳生産量ともに震災前の8割超まで回復する見込みである。かつて避難指示が出された地域で本格的な畜産・酪農が再開する意義は大きく、県は両施設を地域再生の拠点と位置付け、技術面や運営面での十分な支援が求められる。
浪江町の施設
浪江町の施設は、県酪農業協同組合(県酪協)と全国酪農業協同組合連合会(全酪連)、被災農家が出資する会社が運営し、最新鋭の機器を備えている。来年には全酪連の研究部門も移転予定で、研究所を併設した牧場としては国内最大規模となる。施設内には宿泊棟も整備され、連携協定を結んでいる福島大食農学類や東北大大学院農学研究科の学生を受け入れる方針である。新たな施設を、将来の本県の酪農業を担う人材育成の場としても活用することが期待される。
田村市の施設
田村市の施設はJA全農福島の子会社が運営し、酪農に加えて和牛繁殖に取り組む点が特徴である。原発事故前は阿武隈山地を中心とした個別農家が牛を繁殖させていたが、この施設では乳用牛、繁殖雌牛、肉用牛の3種類の子牛の繁殖を進める。生まれた牛は、避難指示などが出された12市町村で酪農・畜産に取り組む農家に供給されるほか、家畜市場を通じて県内に流通する。県内の飼育頭数の増加とさらなる産地化を支える施設として活用することが必要である。
耕畜連携の推進
県は、除染や耕作中断により失われた農地の地力回復のため、浪江町や田村市の施設から出される堆肥などを活用する考えである。県にはJAグループなどと連携し、堆肥の搬送網の構築や貯蔵地点の確保を進め、新たな「耕畜連携」に取り組むことが求められる。



