ハタハタずし、家庭の味が消える
秋田県の県魚であるハタハタが、近年記録的な不漁に直面している。かつて冬の食卓に欠かせなかったこの魚を使った「ハタハタずし」は、家庭ごとに受け継がれてきた保存食だが、漁獲量の減少により、その伝統が途絶えようとしている。
秋田県男鹿市に住む75歳の女性は、「ここ2、3年はハタハタずしを漬けていません」と語る。結婚後、義母から作り方を学び、20年以上にわたり毎年12月に漬け込んできた。漬け込む量は「おけに二つ、6~9キロぐらい」。出来上がったものは知人にも届けるのが恒例だったが、今はそれも難しいという。
ハタハタずしとは
ハタハタずしは、内臓などを取り除いたハタハタを、麹を混ぜたご飯とニンジンなどの野菜、海藻とともに2~3週間漬け込んで作る。なれずしの一種で、発酵した魚のうま味とご飯や麹の甘みが醸し出す独特の酸味が特徴だ。秋田の人々に長年愛され、正月の祝い膳にも欠かせない一品だった。発祥ははっきりしないが、江戸時代前期には名物として広く知られていた。
不漁の背景
近年、ハタハタの漁獲量は激減している。原因として、海水温の上昇や海洋環境の変化が指摘されている。漁獲量の減少に伴い、市場での価格も高騰。家庭で気軽に作れるものではなくなった。この状況は、ハタハタずしの継承に深刻な影響を与えている。
伝統を守る取り組み
こうした中、地域では伝統を守ろうとする動きも出ている。地元の料理研究家や漁業関係者が連携し、少ないハタハタでも作れるレシピの開発や、保存技術の伝承に力を入れている。また、学校給食でハタハタずしを提供するなど、子どもたちに郷土の味を伝える試みも行われている。
ハタハタずしは、単なる料理ではなく、秋田の食文化と人々の知恵が詰まった存在だ。不漁という困難に直面しながらも、その味と技を未来につなぐ努力が続いている。



