深圳で奮闘する北九州出身の日本人起業家
人工知能(AI)やロボットなどのスタートアップが集積し、「中国のシリコンバレー」と称される広東省深圳市で、北九州市出身の石河凌平さん(30)が数少ない日本人起業家として活躍している。石河さんは「ここで成功し、後に続く日本人が出てきてほしい」と語り、単発アルバイト仲介アプリ事業に挑んでいる。
前海深港青年夢工場での挑戦
深圳市南山区にある前海深港青年夢工場は、香港と深圳市の政府機関が出資し、約420社のスタートアップが集まる拠点だ。ここに、唯一の日本人である石河さんの会社「深圳市五右門人力資源有限公司」のオフィスが置かれている。石河さんが手がける事業は、専用アプリを通じて繁忙期の飲食店などと、すきま時間に働きたい労働者をつなぐ単発アルバイトの仲介業である。日本で急速に普及する労働形態を参考に、2024年7月にアプリ提供を開始し、現在は2人の中国人スタッフと共に新規店舗の開拓やアプリの周知に取り組んでいる。
起業への道のりと深圳での経験
石河さんは福岡大学在学中に福岡市のベンチャーキャピタルでインターンを経験し、卒業後は東京のスタートアップに就職した。若手起業家との交流を通じて自らも起業を志すようになり、勤務先の買収を機に独立。フリーランスとして電子商取引(EC)サイト運営を支援していたところ、知人起業家から「中国で起業しないか」と誘われ、即決した。中国語も分からないまま2000万円の出資を受け、深圳に渡った。
深圳ではソフトウェア会社が集積し、開発スピードが速くコストも安いため、厳しい競争が繰り広げられている。石河さんの会社のアプリも委託から3日後に試作品が届き、日本のスピード感との違いに圧倒されたという。夢工場では入居企業間の交流イベントが頻繁に開催され、「激しい競争の中で成功を目指す同世代の起業家から多くの刺激を受けた」と振り返る。
中国市場での課題と展望
アプリ提供開始から1年9か月が経過したが、中国の飲食店では従業員を正社員として雇用することが一般的で、日本のようなアルバイト文化が根付いていないため、事業は順風満帆とは言えない。しかし、出前やネットショッピング、配車サービスの普及に伴い、配送や配車の単発仕事を請け負うギグワーカーが8400万人いるとされ、「働き手のニーズはあるはずで、成長の可能性は大きい」と石河さんは考える。
日中関係の中でのメッセージ
昨年11月の台湾有事を巡る高市首相の国会答弁を機に日中関係が冷え込み、人的交流も減少している状況だ。石河さんは「政治的な課題はあっても、深圳には外国人にも平等にチャンスがある。深圳でチャンスをつかみたいと考える日本人が増えるように、成功する姿を見せたい」と強調する。彼の挑戦は、国際的なビジネス環境における日本人の可能性を示す一例として注目されている。



