幼少期の海での出会いが人生を変えた
岐阜県可児市に住む前城光琉さん(18)は、世界一の魚類剥製師を目指して日々研鑽を積んでいる。その原点は、4、5歳の頃に海で目にした跳ねるボラの姿だった。以来、彼は魚に夢中になり、粘土細工でも絵画でも題材は常に魚ばかり。公園の池で泳ぐ魚を飽きずに眺め、図鑑を開けば時間の経過も忘れて没頭した。
不登校が剥製製作への道を開く
中学1年生の終わり頃、ある出来事をきっかけに学校へ通えなくなった前城さん。同級生が授業を受けている間に自宅で時間を持て余すことに耐えられず、興味のあった魚の剥製作りを始める。100円ショップで道具や材料を揃え、見よう見まねで制作をスタートさせた。
「不登校にならなかったら、剥製に関わっていなかった。苦しい時代ともマイナスとも思っていない」と前城さんは振り返る。動物の皮を剥ぎ、その姿を保存する剥製は、追い求めてきた魚のリアルさに最も近づける表現手段となった。
観察力と知識が生きた技術
剥製に詰める芯材を皮でぴたりと包めるように刃物で削り、目の向きやヒレの曲がり方を細かく再現する。自然と身につけた観察力と蓄積した知識が、ここで生きる。昨年3月には美濃加茂市で初の個展を開催。淡水魚から海水魚、小型から大型まで幅広い60種類もの剥製を展示した。
妥協を許さない完成度への追求
個展終了後、剥製の受注製作を本格化させた前城さん。「注文した人に感動してもらえる出来じゃないと。自分にとって自信作じゃないと。妥協したくない」と語る。魚の世界は広く深く、不明点や疑問点があれば徹底的に調べ上げる。完成度の追求には終わりがない。
多様な活動で魚の魅力を発信
魚の面白さを伝えたいという思いから、活動の幅はどんどん広がっている。剥製作りを教えるワークショップは「他にない体験」と評判を呼び、各地からオファーが殺到。自宅近くのカフェと協力してフィッシュバーガーを定期的に調理・販売するほか、要望があれば魚の解体ショーも披露する。
剥製業界の未来を担う覚悟
それでも活動の中心はあくまで剥製作り。あらゆる魚に対応でき、30年や40年経っても朽ちない剥製が作れれば、「世界一」に近づけると信じている。「プロの剥製師の皆さんがいる中で言いにくい部分もあるけど、それくらい本気です」と前城さん。若手職人が少なく将来の衰退が危惧される剥製業界に対して、「自分がどれだけやるかで決まる、くらいの覚悟を持っています」と力強く語る。
12月に「剥製水族館」を開催
12月12日から約1カ月間、岐阜県博物館(関市)のマイミュージアムギャラリーで、自身最多となる100種の魚を展示する「剥製水族館」を開催する予定だ。誰もが気軽に訪れ、魚の面白さに気付いてもらえるような場所にしたいと考えている。
高校卒業を目前に控えた今、安定した仕事で収入を得ながら二足のわらじで続けるか、この道一本で行くか。前城さんの心は既に決まっていた。好きでたまらない魚に全てを賭け、世界一の魚類剥製師を目指して突き進む。



