漫画『日出処の天子』が能狂言に 大槻文蔵らが孤独な太子の情念を表現
漫画『日出処の天子』が能狂言に 大槻文蔵らが情念表現

漫画『日出処の天子』が能狂言に 大槻文蔵らが孤独な太子の情念を表現

山岸凉子の漫画『日出処の天子』が能狂言化され、2026年5月に大阪公演が実現します。このプロジェクトには、能楽シテ方の人間国宝・大槻文蔵、狂言方の野村萬斎、大鼓方の亀井広忠が参加し、2022年に『鬼滅の刃』を能狂言化したチームが再結集しました。監修と出演を兼ねた大槻文蔵と、刀自古郎女役を演じる大槻裕一が制作過程を振り返り、古典芸能と現代漫画の融合に挑んだ意欲を語ります。

斬新な舞台装置と表現の拡がり

昨年8月の東京・観世能楽堂での初演では、舞台中央に法隆寺・夢殿を模した「作り物」が設置され、壁面の白いスクリーンに様々な映像が投影されました。これは野村萬斎の発案による、能舞台では珍しい斬新な装置です。大槻裕一はこの装置について、「夢殿にも玉座にも寝室にもなる空間が出現し、観客の想像力で多様な見え方を生み出し、映像の力を借りて表現の幅を広げることができました」と説明します。大槻文蔵も、「チャレンジ精神で皆が同じ方向を向き、表現の可能性を拡大していった」と振り返り、伝統芸能の革新に取り組む姿勢を強調しました。

聖徳太子の新たな像と能の情念表現

大槻文蔵は過去に聖徳太子が登場する新作能『桐葵』(2005年)、『河勝』(2008年)、『聖徳太子』(2021年)を手がけ、太子役を演じた経験があります。しかし、原作漫画を読むことで、聖人としての太子像が一変しました。漫画では、厩戸王子(聖徳太子)が超能力者であると同時に、同性の蘇我毛人を愛し、嫉妬や憎悪に苦しむ孤独な人物として描かれています。文蔵は、「人物の感情の高まりや情念の表現は、能が最も得意とする分野でもある」と述べ、すぐに舞台化への手応えを感じたと語ります。この作品を通じて、能の伝統的な情念表現が現代の物語にどのように適用されるかを探求しました。

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原作への忠実さと能としての品位

漫画の愛読者を失望させないよう、装束の色彩や形には工夫が凝らされ、原作者の山岸凉子が各人物に抱く色のイメージも参考にされました。詞章の言葉も、なるべく原作のせりふに近づける努力が払われました。大槻文蔵は、幕開きに野村萬斎演じる厩戸が水浴びをしている時に毛人と出会う場面を選び、「物語の発端で、これからの展開を観客に提示し、印象づける重要な場面だと思いました」と説明します。一方、大槻裕一は、原作を読み終えた時に王朝絵巻の『源氏物語』を連想し、「登場人物の数だけ作品ができる気がする壮大で濃密な世界観でした」と感想を述べました。

能の伝統と現代演技の深化

大槻裕一が演じる刀自古郎女は、兄・毛人と道ならぬ関係を持ち、子を宿す無邪気な少女が激情に身を任せていく役柄です。裕一は、「能ではシテ方が前半と後半で別の人格に変容する点が、この役に近い」と直感し、『道成寺』や『鉄輪』など、嫉妬の果てに狂気をはらむ能のヒロインのイメージを重ねながら、「生々しくなりすぎず、能としての品位を保つこと」を心がけました。また、『鬼滅の刃』や『日出処の天子』などの新作に挑むことで、古典作品の演技も深まってきたと語り、演出家として多面的な視座を持つ野村萬斎から大きな影響を受けたと述べています。「言葉を分かりやすく観客に届けるための発音、発声、イントネーション、息継ぎは古典を演じる上でも重要で、萬斎さんから受けた訓練が役に立っています」と、能の伝統を現代に活かす取り組みを強調しました。

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今後の公演情報

能狂言『日出処の天子』は、2026年5月15日から17日まで大槻能楽堂で再演され、追加公演も予定されています。構成・演出は野村萬斎、作調は亀井広忠が担当し、出演者には観世淳夫、福王和幸、福王知登、石田幸雄、茂山逸平らが加わります。チケットはローソンチケットで販売中です。また、4月19日には東京・観世能楽堂で「大槻文蔵・裕一の会」が開催され、演目は『放下僧』『水汲』『原作 猩々』で、出演は文蔵、裕一、福王茂十郎、野村万作、萬斎らが務めます。詳細は電話(06・6809・4168)で問い合わせ可能です。