伝統の「たつけ」現代風に 岐阜・郡上市の「石徹白洋品店」が人気
伝統の「たつけ」現代風に 岐阜・郡上市の洋品店が人気

岐阜県郡上市の石徹白(いとしろ)地域で、伝統的な農作業ズボン「たつけ」を現代風にアレンジした衣服を製造・販売する「石徹白洋品店」が注目を集めている。店主の平野馨生里(かおり)さん(44)は、地域の伝統技法を守りながら、現代人が長く愛用できるアイテムへと進化させている。

移住と服作りの始まり

平野さんは岐阜市出身で、関東の大学卒業後、東京のPR会社に勤務。故郷への関心から、仕事の傍ら岐阜のまちづくり団体の東京支部で活動した。約1年間の東京と岐阜の往復生活を経て、伝統工芸品「水うちわ」に関する本を出版するため、会社を辞めて岐阜市にUターンした。

25歳の頃、小水力発電プロジェクトで初めて石徹白を訪れ、自然豊かな環境と自給自足的な暮らしに魅了される。その後、同じく石徹白に惹かれた夫とともに移住を決意。フリーランスとして働く中で服作りに興味を持ち、2009年から2年間、岐阜市の服飾学校で技術を学び、2012年5月に個人事業主として「石徹白洋品店」を開業した。

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「たつけ」との出会い

開業後、地域で昔から作られていた農作業用ズボン「たつけ」の存在を知り、地元の高齢女性から直接作り方を習得した。「たつけ」は型紙を使わず、布の縦糸・横糸に合わせて直線的に裁断する「直線裁断」が特徴。パズルのように布を組み合わせ、最後に折りたたむとズボンの形になる巧妙な構造だ。

平野さんは「少ない布でも緻密で巧妙な作りで、動きやすいズボンができる」と感銘を受け、伝統的な製法はそのままに、ポケットを追加したり素材を変更したりして現代のライフスタイルに合うよう工夫。多くの顧客を魅了する商品へと進化させた。

海外での評価と活動の広がり

「石徹白洋品店」の取り組みは海外からも注目されている。2024年に英国で開催された日本民芸に特化した展覧会「Art Without Heroes Mingei」で商品が紹介され、伝統技術や環境への配慮が高く評価された。さらに2025年9月には、自身の起業ストーリーをまとめた著書『石徹白洋品店物語』(婦人之友社)を出版した。

また、2泊3日の「たつけ講師認定講座」を開催し、現在50人以上の認定講師を育成。大学生や社会人などのインターンを受け入れ、草木染や藍染めにも力を注いでいる。

子育てと伝統文化の継承

平野さんは4人の子ども(年中~中学生)を育てる母親でもあり、仕事と子育てを両立。雪囲いや藍畑の作業を子どもたちと一緒に行うこともある。「子育てをするのも喜びだし、誇りある仕事ができるのも喜び」と語り、「私の小さな実践が誰かの役に立てば」と伝統文化を紡ぎ続ける。

店の営業は4月から11月までで、12月から3月は積雪のため休業する。

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