絵巻の細部に魅了される美術史の旅
山本陽子著『絵巻の楽しみ』(角川選書)は、絵巻の世界を深く探求する美術史書として注目を集めています。評者である美術史家の金沢百枝氏(多摩美術大学教授)は、本書を読んで絵巻の細部のおもしろさに魅入られ、虫眼鏡を片手に一気に読み進めたと語ります。その親しみやすく歯に衣を着せない語り口に、スカッとした印象を受けたそうです。
絵巻の歴史的変遷と多様性
絵巻は元々、文字を読むのが苦手な人々のために挿絵を添えたものとして始まりましたが、十二世紀に急変しました。清少納言や紫式部といった平安宮廷人たちがはまり、後白河法皇がドはまりするほどの大流行を迎えたのです。本書では、平安時代から江戸時代までの代表的な絵巻18本を紐解き、その魅力を詳細に解説しています。
コラムでは、入門者のために基本を挿絵付きでわかりやすく説明し、本文では最前線の研究と著者自身の説を紹介。絵巻のジャンルはマンガ同様に多様で、優美に大人の愛を描く女絵『源氏物語絵巻』や、ギャグ漫画的な『鳥獣戯画』など、様々な表現が楽しめます。
代表的作品の特徴と技法
ロードムービーのような男絵『信貴山縁起絵巻』では、詞書のない大画面の風景描写に挑戦し、犯罪ドラマ仕立ての『伴大納言絵巻』では謎が謎を呼ぶ展開が興味深いです。耽美な歌物語『伊勢物語絵巻』では、細かく砕かれた金銀箔を散らす工芸技法・砂子のキラキラが、ふられ男の春の夜を照らす様子が描かれています。恋人と過ごした昨春との違いを象徴するかのように、小さなツクシが生えている細部にも注目です。
本書は、絵巻の歴史的意義から現代的な楽しみ方までを網羅し、美術史愛好家だけでなく、一般読者にも親しみやすい内容となっています。価格は2200円で、角川選書から発売中です。



