「泣き虫先生」と呼ばれ、京都・伏見工高(現京都工学院高)ラグビー部の監督として知られた山口良治さんが亡くなった。その生涯を通じて貫いた信条が「信は力なり」である。この言葉の重みを裏付ける体験を、2019年のラグビーワールドカップ日本大会に合わせた取材で聞く機会があった。
荒れた学校への赴任
山口さんが伏見工高に赴任した当時、同校は誰も行きたがらないほど荒れ果てていた。「山口が行くとおとなしくなる」という評判が立ち、結果的に赴任が決まったという。彼の存在そのものが、学校に変化をもたらすと期待されていたのだ。
バイクで廊下を走る生徒との対峙
ある日、生徒がバイクに乗って廊下を走ってきたことがあった。山口さんは立ちはだかり、思わず目を閉じたが、生徒はその横を通り過ぎていった。後日、その生徒が「さっきは悪かった」と謝罪してきた。山口さんは「はねられることはないと信じていたから」と返したという。
「はじめから悪い子はいない。信じてもらえれば変わるんです」。山口さんは、その生徒のうれしそうな表情をずっと覚えていた。信じることが人を変える力を持つという信念が、ここに具現化されていた。
「信は力なり」の実践
このエピソードは、山口さんの指導哲学の核心を表している。彼は生徒一人ひとりを信じることで、彼ら自身が変わっていくことを確信していた。その姿勢が、伏見工高ラグビー部を全国屈指の強豪へと導いた原動力となった。
山口良治さんの功績は、単にラグビーの勝利だけではない。荒れた学校に希望をもたらし、多くの生徒の人生を変えたことこそが、彼の真の遺産である。



