少子化は止まらない、出生率より「暮らしの質」重視の子育て支援を 小峰隆夫・大正大客員教授
少子化は止まらない、出生率より「暮らしの質」重視の子育て支援を

2025年の出生数が10年連続で過去最少を更新した。政府はさまざまな対策を打ち出すが、出生率の低下に歯止めはかかっていない。これからの「少子化対策」に何が求められるのか。人口問題に詳しい小峰隆夫・大正大客員教授に聞いた。

出生率低下の背景に「ライフスタイルの多様化」

結婚したい人が全員結婚し、望む子どもを持てたと仮定した場合の出生率を「希望出生率」という。政府は2020年の「少子化社会対策大綱」で、この値が1.8であることを根拠に、2025年度までの「希望出生率1.8の実現」を掲げた。ところが2021年の調査をもとに計算し直すと、希望出生率は1.6に下がっていた。

少子化の原因として、若者の所得が低いことや教育費の負担がよく指摘される。しかし、こうした問題が全て解消したとしても、出生率は1.6にとどまるという。日本の人口を維持するために必要な約2.07にはほど遠い状況だ。子どもを生み育てる若い世代も減っていくことから、人口減少は避けられない。

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背景には、価値観や生き方の変化がある。かつては結婚や出産が「標準」とされてきたが、現在は多様なライフスタイルが広がっている。こうした変化は尊重されるべきで、結婚や出産を押しつけることがあってはいけない。

「異次元の少子化対策」の効果は疑問

一方で、子どもを持ちたいと願う人々がその希望を実現できる環境を整えることも重要だ。現在の政府の「異次元の少子化対策」は、経済的支援や保育サービス拡充に重点を置いているが、効果は限定的との指摘がある。小峰教授は、「出生率の数値目標にこだわるよりも、暮らしの質を高める視点が欠かせない」と強調する。

例えば、長時間労働の是正や柔軟な働き方の推進、地域コミュニティの再生など、子育て世帯が安心して暮らせる社会基盤の整備が急務だ。また、若い世代の所得向上や教育費負担の軽減も引き続き重要だが、それだけでは不十分である。

問われる政策の優先順位

少子化対策は短期的な成果を求められがちだが、長期的な視点が必要だ。小峰教授は「人口減少は避けられない現実として受け止め、その中でどう持続可能な社会を築くかを考えるべき」と語る。具体的には、移民政策の議論や、地域の活力を維持するためのスマートシュリンク(賢い縮小)の推進など、多角的なアプローチが求められる。

政府は2023年にこども家庭庁を設置し、少子化対策を強化したが、効果はまだ見えていない。有識者からは、政策の優先順位が不明確で、効果検証が不十分との声も上がる。出生率の向上だけを目標にするのではなく、子育ての質や社会全体の幸福度を指標に加えるべきだとの意見もある。

少子化は日本のみならず多くの先進国が直面する課題であり、各国の事例から学ぶことも多い。例えば、フランスでは手厚い家族政策により出生率が比較的高いが、それでも完全な回復には至っていない。日本に合った独自の対策が求められる。

小峰教授は最後に、「少子化対策は『子どもを産め』という圧力ではなく、子どもを持ちたい人がその希望をかなえられる社会を目指すべきだ。そのためには、社会全体で子育てを支える意識改革が必要だ」と訴えている。

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