山火事がもたらした思わぬ恩恵
埼玉県ときがわ町にある弓立山(標高427メートル)で、2013年5月に発生した山火事が、思わぬ観光資源を生み出しました。山頂近くの東斜面約7.6ヘクタールが焼失し、うっそうと茂っていた木々がなくなったことで、山頂からの眺望が劇的に改善。ハイカーの間で「低山なのに高山並みの景色を楽しめる」と口コミが広がり、人気が急上昇しています。
町の観光整備の取り組み
町はこの機会を逃さず、観光地としての整備を積極的に進めています。シルバー人材センターの協力で登山道に階段を設置し、山頂にはツツジを植栽。2022年には山頂の土地約2ヘクタールを購入し、誰でも自由に訪れられる公有地としました。2023年には長さ11メートル、奥行き4メートルの展望デッキを新設し、微生物を利用したバイオトイレも設置。麓には公衆トイレを新築し、訪れる人々の利便性を向上させています。
山頂には、周囲の山々を解説する「展望図」が設置され、西に秩父の武甲山、東に東京スカイツリー、南に神奈川県の丹沢、北に群馬県の赤城山を望むことができます。この絶景が評判を呼び、弓立山を訪れる人は2023年度の約5000人から、2024年度は約8700人、2025年度には1万人に増加。うなぎ登りの人気ぶりです。
地域全体での観光促進
町内にはゴルフ場や天然温泉、豆腐店、農産物直売所などがあり、それぞれ約10万~18万人の集客があります。町は弓立山の魅力をさらに発信し、観光客を現在の年間80万人弱から100万人に増やす目標を掲げています。
2025年6月には、町と地元の大附地区、町観光協会が共催で「第1回ゆみたてやままつり」を山頂広場で開催。ウクレレや吹奏楽の演奏が披露されました。2026年6月7日には第2回祭りが開かれ、約250人が参加。武者姿の町職員が展望デッキから四方に矢を放つパフォーマンスを行いました。これは、平安時代の武将・源経基が土地の境界を定めるために弓立山の山頂から矢を放ったという伝承にちなんだものです。
また、小中高生約40人で構成される「ときがわ子ども音楽倶楽部」が「天空の舞台」で生演奏を披露。ベースを担当した滑川町の中学3年生、鈴木陽君(14歳)は「高い所は苦手だけど、うまく弾けてよかった」と笑顔を見せました。
家族連れにも人気の山
男児2人を連れて訪れた町職員の吉野靖子さん(42歳)は「山を下りれば日常の生活圏で、商店や天然温泉がある。家族で手軽に楽しめる山です」と語りました。山頂広場には、丸太4本と長さ10メートルのロープで作られたブランコが登場し、老若男女が「天空ブランコ」を楽しんでいます。
弓立山へは麓の三波渓谷駐車場を利用でき、登山口から徒歩50分で山頂に到着します。手軽に絶景を楽しめる低山として、今後も多くの登山客が訪れることが期待されています。



