最新ヒット曲が続々登場 2025年度高校音楽教科書の内容
2025年度の教科書検定で合格した高校「音楽Ⅱ」の教科書には、現代の音楽チャートを賑わせる人気アーティストの楽曲が多数掲載されている。教育現場に最新の音楽文化を取り入れる試みが進んでいる。
各社教科書にみる現代音楽の採用
教育芸術社の教科書では、Mrs.GREEN APPLEの「ダンスホール」が3曲目に採用された。この曲はリズムの特徴を生かし、曲の雰囲気に合った歌い方を工夫する歌唱教材として活用されている。教科書には「曲の途中で2回転調しているが、どのような効果がもたらされているか」という思考を促す記述も見られる。
音楽之友社はback numberの「水平線」を教科書の冒頭に配置。2020年に作曲された経緯について「新型コロナウイルスの流行により全国高等学校総合体育大会(インターハイ)の中止を経験した高校生たちの声に触れ、彼らの喪失感や葛藤を受け止めて作曲された」と説明している。
大修館書店もOfficial髭男dismの「Pretender」から教科書を始めている。2019年に配信が開始されたこの曲は、メンバーの地元である鳥取県のJR米子駅で発車メロディーにも採用された実績を持つ。「クライマックスを意識して歌声を響かせよう」という具体的な歌唱アドバイスも記載されている。
人気曲を教科書冒頭に配置する教育的意図
神奈川県内の公立高校で約40年間音楽教育に携わってきた60代の男性教員は「流行曲で生徒の興味を引きつけるためではないか」と分析する。真新しい教科書を開いた時、親しみのある曲が最初にあれば学習意欲が高まる効果が期待できるという。
ヒット曲を教材として扱う際の課題
しかし同教員は「困ったこともある」と指摘する。過去に使用した教科書に掲載されていた2000年代の有名ヒット曲は、音域の幅が広すぎて生徒に無理な発声を強いてしまった。年度初めの授業には適さなかったという。
「みんなが耳にしたことがあり、聞いていて心地良い曲だからといって、教材として良い曲とは限らない」
リズムが複雑だったり、ラップのように一つの音符に多くの歌詞が詰め込まれていたりする曲は、授業で扱うのが難しいと感じる場面が多い。教員は「比較的歌いやすいコード進行や音域の曲の方が、導入教材には適している」と強調する。
経験豊富な教師が推奨する「教材として適した曲」
具体的な教材として、井上陽水の「少年時代」やいきものがかりの「ありがとう」などを挙げる。「落ち着いたコード進行を基本とし、メロディーラインに抑揚のある曲」が歌唱授業の導入で使いやすいという。
また、民族音階を教える授業では、琉球音階を基調とするTHE BOOMの「島唄」を導入に使用した経験もある。これらの曲は音楽的要素を学びながらも、無理なく歌唱練習ができる点が評価されている。
変化する生徒の音楽的素養と教育現場
一昔前は、「スタンダード」と呼ばれる多くのアーティストにカバーされる映画音楽や、ビートルズなどの「ポピュラー音楽」を演奏すれば生徒の関心を引くことができた。しかし最近では、これらの曲を知らない生徒も増えているという。
「好きな音楽だけを選択して聴く時代になり、生徒との『共通言語』となる曲が減っているように思う」
音楽教育の現場では、最新の音楽文化を取り入れつつも、教育的観点から適切な教材を選択するバランスがますます重要になっている。2025年度の教科書検定では220点が合格となり、1社の4点が不合格となった。教科書をめぐっては、国語や英語の教科書でもフェイクニュースやSNSによる「分断」などの現代的な課題が取り上げられるなど、教育内容の現代化が進んでいる。



