那須雪崩事故から9年、安全登山への模索が続く
栃木県那須町の茶臼岳で県立大田原高校の生徒ら8人が死亡した痛ましい雪崩事故から、3月27日でちょうど9年を迎える。この悲劇を教訓に、栃木県教育委員会は高校生の安全な登山環境の整備に継続的に取り組んでいる。特に近年は、登山に関する専門知識を持つ教員の不足が深刻化する中、新たなアプローチとして「地域の活動」を軸とした実践研究を今年度から本格的に開始した。
地域指導者と連携した新たな登山教育
県教委の実践研究は、文部科学省が推進する部活動の「地域展開」モデルを参考にしている。具体的には、平日は学校の部活動として基礎トレーニングを行い、週末を中心とした実際の登山活動は「地域の活動」として位置づけ、外部の専門家が指導を担う仕組みだ。
この取り組みでは、日本スポーツ協会や日本山岳ガイド協会が認定する資格を持つ地域指導者が中心となり、顧問教諭の引率が不要となる。現在、実践研究には佐久間利美さん(72)ら豊富な登山経験を持つ2人の地域指導者が参加している。
生徒主体の計画書作成で安全意識向上
地域の活動は昨年12月に始まり、県立宇都宮白楊高校の山岳部員らが参加している。従来は顧問教諭が一方的に作成していた登山計画書を、生徒自身が作成プロセスに参加する点が大きな特徴だ。
ある女子部員は「これまでは決められた山に、言われた持ち物を持って登るだけでした。計画書の作成を通じて、安全登山に必要な知識を学べる貴重な機会です。将来、趣味として山登りを続ける際にも役立つでしょう」と語る。
同部顧問の金鋪良昭教諭(40)も「私自身、登山の専門知識がない状態で顧問を引き継ぎ、当初は計画書作成に戸惑いました。生徒たちが専門家と直接活動しながら安全知識を吸収することは、非常に意義深いことです」と実践研究の価値を強調する。
指導者不足と責任問題の課題
しかし、地域指導者として活動できる人材は決して潤沢ではない。県教委は、希望校が増えた場合に県山岳・スポーツクライミング連盟への派遣依頼を想定しているが、連盟側は「数人ならば可能」との回答に留まっている。さらに、派遣可能な指導者の多くは60代以上で、後継者育成が急務となっている。
佐久間さんによれば、那須雪崩事故で引率教諭が刑事責任を問われた影響から、「責任問題を懸念して指導に二の足を踏む人も少なくない」という。このため、活動における責任の所在を明確にすることも重要な課題となっている。
事故の教訓を未来へ
県教委健康体育課は「那須雪崩事故の反省を踏まえ、学校登山はガイドラインに準じて実施されるようになりました。地域指導者、顧問、生徒が一体となり、あらゆる危険を想定して計画書を作成することで、現場での判断ミスを減らし、引率者の負担軽減にもつなげたい」と説明する。
9年の歳月が経過した今も、安全な登山環境の構築は継続的な課題だ。栃木県の実践研究は、悲劇を繰り返さないための具体的な一歩として、関係者の期待を集めている。



