70年の伝統を紡ぐ聖歌隊、才能と奉仕の心を育む
青山学院大学系属浦和ルーテル学院中・高等学校(さいたま市)の聖歌隊は、開校間もない約70年前から活動を続け、特別礼拝や式典に欠かせない存在となっています。隊員たちは歌唱の才能を育みつつ、仲間を思いやり、共に自主性をもって活動する力を養っているのです。
真摯なまなざしで歌い上げる練習風景
3月16日の午後3時、音楽室では7年生(中1生)から11年生(高2生)までの聖歌隊メンバー18人が、2日後に開催される「12年生を送る会」に向けて仕上げの練習に励んでいました。昼食をはさんで3時間半に及ぶ入念な稽古です。
輝かしい未来を思わせる賛美歌「栄に満ちたる」や、旅立ちを歌った日本のポップス曲『正解』など、披露される曲はさまざま。生徒たちはポップスでは明るい表情で、賛美歌では真摯なまなざしでと、見事に歌い分けています。
顧問の岡田知子教諭が「出だしのところはもっと強く」と指示すると、上級生が下級生の手元の譜面を指さして「ここからだよ」とフォロー。男子4人、女子14人という構成ですが、混声合唱の部分では男子が数の差を補うように力強く歌い上げていました。
学校行事に欠かせない奉仕活動
キリスト教に基づく教育を行う同校では、1953年に小学校を創立し、その2年後に学内の聖歌隊を組織しました。63年に中学校、70年には高校を新設。小学校の活動は「合唱部」となり、中高では「聖歌隊」が活動することになったのです。
中高では部活動ではなく、「宗教部」直属の有志による組織となっています。クリスマスやペンテコステ(聖霊降臨)の礼拝のほか、入学式・卒業式などで、やはり宗教部直属の組織であるハンドベルクワイヤーとともに活躍しています。
岡田教諭は「礼拝に欠かせない歌を届ける奉仕活動です。賛美歌を歌うことによって心が喜びで満たされ、それを聞く人に伝えることを目的としています」と語ります。同校では小学校も同じ校舎内にあり、小学校の合唱部から始めて中高の聖歌隊へと、在学中ずっと活動を続ける生徒もいるのです。
自主性と思いやりが育まれる場
聖歌隊の生徒たちの自主性には、岡田教諭も驚かされたことがあると言います。「隊の活動をより広く知ってもらおうと、自分たちで告知のポスターを作り、1学期に1回程度、昼休みに礼拝堂でコンサートを開くようになったのです」
「今の中高生には、与えられたものをきちんとこなすのは得意だけれど、自分から新しいことを始めるのは難しいという傾向がある中、自分たちの意志で積極的に動こうという気持ちが育っているのを感じました」と岡田教諭は感慨深げに話します。
長年続く活動とあって、同校在学中に聖歌隊に所属していた卒業生のうち2人が、今は同校教諭として聖歌隊の顧問に加わり、熱心に活動を支えています。声楽家となった卒業生が、指導に加わるため訪ねてくることもあるそうです。
隊長と副隊長に聞く活動の魅力
聖歌隊の隊長を務める中邑美咲さん(現12年生)と、同学年で副隊長の小野寺真吾君に話を聞きました。中邑さんは、小学校から同校に通って合唱部に所属し、中高の聖歌隊に憧れを抱いていたそうです。
「行事でガウンを着て歌う姿に心動かされ、自分もぜひあの中に入りたいと願っていました」と中邑さん。聖歌隊の活動は12年生の5月まで。残された期間が少ない中、後輩の指導に力が入ります。
「皆で一緒に歌っていると、ほかの人の声に一生懸命耳を傾けるようになります。後輩がちょっと迷って歌っていると思ったら、さりげなく声をかけたりします。そういう心遣いも、意識せずにできるようになりました」
小野寺君は「音楽が好き、歌うことが楽しい」という気持ちで聖歌隊に参加しました。「賛美歌でもポップスでも、歌詞の意味をよく考え、気持ちが伝わるように歌うことを心がけています」と話します。
オーストリアの作曲家ハイドンの曲などを原語のドイツ語で歌うこともありますが、隊員たちは皆、歌詞に込められた思いが伝わるよう努めながら歌っているのです。
未来への期待と展望
「生徒たちの積極性が育っていることを、本当にうれしく感じています」と岡田教諭は語ります。「コロナ禍前は聖歌隊の合宿があり、近隣の老人ホームに慰問に行くといった計画も立てていました。今の生徒たちには、自ら行動の場を広げていく力があります」
「今後は、学校の外に出ていく活動を、生徒主体で取り入れていきたい。生徒たちには、歌によって、さらに大勢の人の心を動かしていってもらいたいと期待しています」
同校では子どもの才能を育てる「ギフト教育」を教育方針に掲げています。自らの「ギフト」、すなわち才能を生かし、他の人を幸せにするという奉仕の心が、自然に備わっているのです。聖歌隊の存在は、まさにこの学校のあり方をそのまま体現していると言えるでしょう。



