公立高校入試で33道府県が平均志願倍率1倍割れ、私立授業料無償化で「公立離れ」加速か
今春入学する生徒が受験した2026年度の公立高校入試において、47都道府県のうち33道府県で平均志願倍率が1倍を下回ったことが、読売新聞の調査で明らかになった。これは全体の約7割に相当し、少子化の進行に加えて、2026年度から開始された私立を含む高校授業料無償化制度の拡充が、「公立離れ」の傾向を強めている可能性が指摘されている。
調査方法と平均志願倍率の定義
読売新聞は、入試が集中する2月から3月にかけて、47都道府県の教育委員会が公表した資料を基に、全日制公立高校の一般入試(主に5教科受験)における平均志願倍率を集計した。愛知県など複数校への同時出願が可能な地域では、第1志望を対象としたデータを採用している。
平均志願倍率は、各都道府県の公立高校に受験を申し込んだ生徒の総数を、各校の募集定員の合計で割った値である。この数値が1倍を下回ると、志願者の総数が募集定員に満たない状況を意味し、理論上は全員が入学できる計算となる。ただし、実際の倍率は学校ごとに大きく異なる点に注意が必要だ。
都道府県別の志願倍率の詳細
平均志願倍率が1倍を下回った33道府県の中では、新潟県と岡山県が初めて1倍を割り込み、ともに0.99倍となった。さらに、0.9倍を切り0.8倍以上だったのは11府県、0.8倍に届かなかったのは5県で、山形県の0.68倍が最も低い値だった。
一方、1倍以上を記録したのは14都府県で、東京都の1.25倍が最高となった。現行の入試制度下では単純比較は難しいものの、記録が残る範囲で過去最低を更新したのは34都道府県に上り、東京や香川、福岡など1倍を超えた地域も含まれていた。
倍率低下の背景と教育委員会の見解
倍率低下の理由について、各教育委員会に尋ねたところ、少子化に加えて私立高校の授業料無償化の影響を挙げる声が相次いだ。愛知県教育委員会の担当者は、「従来は私立高校を滑り止めとする生徒が多かったが、第1志望とする生徒が増加している。無償化の影響が顕著に表れている」と述べた。
岡山県教育委員会の担当者も、「中学生の進学希望調査で、私立高校を第1志望とする生徒が200人以上増えた」と話し、制度変更が進路選択に与える影響を強調した。
高校授業料無償化制度の拡充内容
2026年度から、政府の就学支援金制度が大幅に拡充された。これまでは公立高校の授業料に相当する年11万8800円が全生徒に支給され、私立高校の生徒には世帯年収に応じて上限39万6000円まで加算されていた。新制度では所得制限が撤廃され、上限額が私立高校授業料の全国平均に相当する年45万7200円まで引き上げられた。
私立高校の授業料無償化を全国に先駆けて独自実施した東京都や大阪府では、施設や進学指導が充実しているイメージの強い私立高校の人気が高まっており、制度拡充により全国的に公立高校の地盤沈下が懸念されている。
専門家の指摘と今後の課題
早稲田大学の菊地栄治教授(教育社会学)は、「公立高校の志願者減少は今後も続く可能性が高い。しかし、定員割れを基準に統廃合を進めると、地域から高校が消滅するリスクがある。多様な生徒を受け入れる公立高校の価値を再確認し、国と自治体が連携して支援することが不可欠だ」と指摘している。
この状況は、教育機会の均等や地域社会の維持といった観点から、早急な対策が求められる課題を浮き彫りにしている。



