白いロマンスカーが深夜の陸送で新天地へ 鉄道ファン数百人が見守る感動の瞬間
「白いロマンスカー」の愛称で親しまれ、2023年に引退した小田急電鉄の特急形車両「VSE」50000形の先頭車両が、3月1日未明に神奈川県海老名市で感動的な「引っ越し」を遂げました。電車基地から大型トレーラーに載せられ、市内に建設中のロマンスカーミュージアムへと慎重に搬入されたのです。
陸送は極めて珍しいイベント 深夜にもかかわらず大勢のファンが集結
鉄道車両をトレーラーで輸送する「陸送」はそれ自体が頻度の少ない作業ですが、特にロマンスカー級の車両が公道を移動する事例は極めて稀です。全長18.2メートル、重量29.7トンという巨大な車体を載せた特別仕様のトレーラーは、小田急線海老名駅前の通行規制された区間を、電車基地から展示施設まで約200メートルにわたって移動しました。
午前1時を過ぎた深夜にもかかわらず、道路沿いには数百人もの熱心な鉄道ファンが詰めかけ、カメラを構えてこの歴史的瞬間を見守りました。トレーラーは一時停止を繰り返しながら、そろりそろりと慎重に進み、無事に目的地へ到着しました。
VSE50000形の輝かしい歴史と特徴
白く輝く車体が特徴のVSE50000形は、2005年3月に定期運行を開始した小田急電鉄を代表する観光特急車両です。以下のような特徴で多くの乗客から愛されました:
- 10両編成で2編成が製造され、新宿と箱根湯本を結ぶ観光路線で活躍
- 高い天井と開放感あふれる室内設計
- 景色を楽しみやすいように窓側へ少し傾斜した特別な座席配置
- 快適な乗り心地と優雅なデザインが融合した「移動する展望室」
しかし、経年劣化のため2022年3月に定期運行を終了し、翌年12月には臨時運行も幕を閉じました。今回陸送されたのは、2編成のうち第1編成の新宿寄り先頭に位置する10号車で、3月19日からロマンスカーミュージアムで一般公開される予定です。
鉄道文化の保存と継承への期待
この陸送作業は、単なる車両の移動以上の意味を持っています。引退した鉄道車両を保存し、後世にその価値を伝える重要な文化事業の一環なのです。多くのファンが深夜にもかかわらず集まった背景には、VSEに対する深い愛着と、鉄道文化を守り伝えたいという強い思いがありました。
ロマンスカーミュージアムでの展示開始後は、かつて箱根への旅を彩った「白いロマンスカー」の雄姿を、より多くの人々が間近で鑑賞できるようになります。これは鉄道ファンだけでなく、地域の観光資源としても大きな価値を持つでしょう。
深夜の海老名市で行われたこの静かながらも感動的な「引っ越し」は、一つの鉄道車両の新たな旅の始まりを告げるものでした。VSE50000形は、走る姿から展示される姿へと役割を変え、これからも多くの人々に鉄道の魅力を伝え続けることでしょう。



