除染土壌再生利用の停滞が福島復興の課題に
東京電力福島第1原発の事故に伴う県内の除染で発生した土壌の再生利用が思うように進んでいません。中間貯蔵施設に保管されている約1400万立方メートル、東京ドーム11杯分に相当する除染土壌などのうち、放射性物質濃度が低い約4分の3の土は、再生利用が可能と見込まれています。政府は「復興再生土」として、公共事業などでの利用を推進する方針を掲げていますが、その実現には多くの課題が横たわっています。
政府の工程表と現状の乖離
政府は昨年8月、最終処分と再生利用の実現に向けた今後5年程度の取り組みを整理した工程表を策定しました。復興再生土の利用については、土壌の安全性を周知し、利用の機運を高めるため、東京・霞が関の中央省庁や地方の出先機関などで検討することが明記されました。しかし、これまでの実績は限定的で、首相官邸の前庭と中央省庁9カ所の花壇などでの利用量はわずか80立方メートルほどに留まっています。
また、環境省の庁舎内などで以前から設置されている除染土が入った植物の鉢植え周辺の放射線量に目立った変化はないとされていますが、こうした情報は広く周知されていません。政府が本気で実証を進めるのであれば、より多くの場所で利用を図り、安全性を証明するデータを公開すべきです。花壇の利用や鉢植えの設置を拡大するなど、霞が関での利用を強力に推進することが求められます。
地方での反対と政府の対応
政府は今後、各省庁の出先機関などで再生利用を進める計画ですが、霞が関に比べ、地方の出先機関は生活エリアに近く、周辺住民などの反対が想定されています。実際、環境省が2022年に計画した東京都新宿区や埼玉県所沢市の同省施設での実証事業は、周辺住民の反対などで断念を余儀なくされました。
石原宏高環境相は「秋までに利用する場所は必ず見つけたい」と表明していますが、2022年の実証事業では住民説明会の周知方法や開催の在り方などに批判もありました。政府はこれまでの反省を踏まえ、住民の不安の解消に努める必要があります。住民との対話を重視し、透明性の高い情報提供が不可欠です。
自治体首長の認識不足と政府の責任
福島民友新聞社と東京大大学院の関谷直也教授が共同で全国の自治体首長を対象に実施した調査では、回答した2割弱の首長が除染土壌の再生利用の受け入れを検討する可能性を示しました。しかし、4割強の首長が再生利用について「知らなかった」と回答し、3割の首長は2045年3月までの県外最終処分について知らなかったという結果が出ています。
法律で定め、工程表を策定しても多くの首長が内容を把握していない現状は、政府の取り組み不足と言わざるを得ません。県外最終処分への道筋を確かなものにするためには、除染土壌の再生利用を急がなければならず、政府の本気度が問われています。現状を重く受け止め、改善を図ることが急務です。



