Netflix番組舞台の「くまちゃんハウス」老朽化で存続危機 築60年超の地域拠点、建て替えへ
くまちゃんハウス老朽化で存続危機 築60年超の地域拠点 (04.03.2026)

Netflix番組舞台の古民家が存続の危機 築60年超で老朽化進む

東京都三鷹市の住宅街に佇む古民家「くまちゃんハウス」が、深刻な老朽化により存続の危機に直面している。この建物は動画配信サービスNetflixのリアリティ番組「クィア・アイ」(2019年)でも舞台として登場し、広く知られるようになった地域の拠点だ。1960年に建てられた平屋建てで、築60年以上が経過している。

床がへこみ扉も閉まらない 土台からの建て替えが必要に

近年、老朽化が急速に進み、床がへこみ、扉も完全に閉まらなくなっている。風が吹き込む状態が続き、根本的な修繕では対応が難しくなったため、土台から造り直す建て替え計画が浮上した。運営するNPO法人「グレースケア機構」は、現在の建物を解体し、2階建ての新たな施設に生まれ変わらせる構想を進めている。

新しい施設では、身体に不自由がある人でも使いやすい浴室や台所、トイレを整備する予定だ。研修やワークショップ用の畳部屋も設置され、隣接するケア付きシェアハウスとデッキでつなぐ計画もある。現在の明るい雰囲気を引き継ぐため、琉球畳や縁側、ふすまなどは可能な限り再利用される方針だ。

赤ちゃんからお年寄りまで 多世代が集う「居場所」

くまちゃんハウスは、赤ちゃんから高齢者までが気軽に集える地域の「居場所」として長年親しまれてきた。週に一度開かれる「くまちゃん保健室」では、ヨガやおしゃべりを楽しんだり、看護師に健康相談ができたりする。子どもたちを招くイベントや、高齢者が地元の郷土史を語る会、防犯講習など、多様な活動が展開されてきた。

看護師の寺嶋香里さんは「元気なときから人生に寄り添えるつながりがつくれる場です」と語る。従来の医療や介護の現場では、具合が悪くなってから関わるケースが多いが、ここでは健康な状態から継続的に関係を築ける点が特徴だ。

制度の枠を超えた支え合い グリーフケアも提供

この施設では、介護保険や障害福祉などの制度の壁を越えた支え合いが実践されている。大切な人を亡くした悲しみを癒やす「グリーフケア」も重要な役割の一つだ。亡き母を担当した看護師の顔を見ては母親を思い出し涙する女性や、夫を失った後も心のモヤモヤを抱えながらも元気を取り戻す女性の姿がある。

スタッフの高尾久美子さんは「地域をつなげている。救われる時間だし、救われる場所」と強調する。型にはまりがちな従来の施設を苦手とする高齢者も、ここには気軽に訪れるという。

空き家から地域拠点へ 歴史と命名の由来

くまちゃんハウスにはもともと、高齢の女性が一人で暮らしていた。女性が亡くなった後、空き家となったが、女性と交流のあった看護師の佐久間洋子さんが借り受け、仲間とともにフリースペースの運営を開始した。佐久間さんの名前にちなんで「くまちゃん」と名付けられ、2018年12月からはNPO法人グレースケア機構が運営を引き継いでいる。

5000万円の建て替え費用 クラウドファンディング開始

建て替えには総額5000万円の費用が見込まれている。グレースケア機構はまず第一段階として130万円の支援を、3月15日までインターネット上で募集している。柳本文貴代表は「制度の隙間で一人にせず、抜け落ちているニーズをかなえていきたい」と語り、地域のニーズに応える場としての継続を目指している。

スタッフの鈴木順子さんは「ここでお茶を飲もうとか、面白いことやってるかなと、ふらっと立ち寄れる場になれば」と期待を込める。老朽化した建物の建て替えは、単なる物理的な更新ではなく、地域のつながりと支え合いの文化を未来へ引き継ぐ重要な取り組みとなっている。