昭和30年代の狛江を写真で振り返る 川崎の高橋さん、初の本格個展で農村から都市への変貌を追う
昭和30年代(1955年から1964年)の東京都狛江市を捉えた貴重な写真展「5~60年前の狛江百景」が、4月21日から25日まで、同市元和泉1丁目の「泉の森ギャラリー」で開催されます。この展示会は、川崎市麻生区に住む高橋嬉文(よしふみ)さん(87)が主催するもので、高度経済成長期を目前に控えた東京郊外の農村風景をモノクロームで記録した作品群を公開します。
農村から都市へ変貌する直前の風景を記録
高橋さんは相模原市で生まれ育ち、都内の高校を卒業した昭和32年に、旧狛江町の精密機器メーカーに就職しました。当時の狛江は、首都東京の食料を支える農村地帯として知られていましたが、高度経済成長の波が押し寄せ、開発の名の下に美しい自然や伝統的な生活様式が急速に失われつつある状況でした。
文学青年だった高橋さんは、明治の文豪・国木田独歩が「武蔵野」で描写した雑木林に憧れを抱いており、「狛江の貴重な景色を形に残したい」という思いから、休日を利用して撮影活動を始めました。その結果、約2千コマ分の白黒フィルムを大切に保管してきました。
写真展の見どころと展示内容
今回の写真展では、保管してきたフィルムから厳選した作品を、新たにプリントして展示します。具体的には、ワイド四つ切りサイズ約30枚と2L判約70枚、合計約100点のモノクロ写真が並びます。展示される風景には、以下のようなものが含まれています:
- 多摩川の土手で草をはむ牛の姿
- 田畑の遠くにそびえる富士山の眺め
- 地下水が湧き出す池で遊ぶ子どもたちの様子
これらの風景は、現代の狛江市からは想像もつかない、のどかで牧歌的な光景ばかりです。高橋さんは、メーカーを退職後、捕鯨船の仕事で得た資金を元に、フォトエッセー集「武蔵野の日々」を自費出版しており、今回の写真展でも同書に収録された作品を展示する予定です。
初の本格的な個展への思い
高橋さんは過去に横浜市や稲城市で営んでいた画廊で写真を展示した経験はありますが、本格的な個展を開くのは今回が初めてです。「遅きに失した感はあるが、たくさんの人に見てもらいたい」と語り、来場を呼びかけています。写真展は午前10時から午後5時まで開催され、入場は無料です。
この展示会は、昭和30年代の狛江が農村から都市へと変貌する過程を視覚的に記録した貴重な資料として、地域の歴史や文化を考える機会を提供します。高橋さんの情熱的な撮影活動が、失われつつある風景を後世に伝える役割を果たしているのです。



