連載「くらしとマネー」では、SNS型投資詐欺の実態を深掘りする。今回、東京都内の60代男性が約9000万円を失った事例を紹介する。きっかけは2023年秋、フェイスブックで見かけた投資塾の広告だった。広告には、大手ネット証券会社の公認を得ていると記載され、主宰者は国内外の証券会社に30年近く勤務した経験があると謳っていた。
早期退職を控え、老後資金に不安
当時57歳だった男性は、勤務先の製薬会社を早期退職することが決まっていた。これまでも株式投資で資産を増やしてきたが、老後資金はいくらあっても安心できない。広告で案内されたアカウントに登録すると、主宰者のLINEグループに招待された。
巧妙な演出とコピートレードの勧誘
まずは「インフレと利上げ」など経済に関するオンライン講義を受けさせられた。男性は「いま思えば、投資塾の『もっともらしさ』を演出するためのものだった」と振り返る。次に、投資塾の独自戦略とされる「コピートレード」への参加を促された。これは、外資系証券会社に口座を開いて入金すると、投資塾が代わりに運用してくれるという仕組みだ。
運用利率は入金額に応じて変わり、プラン一覧が提示された。低位のブロンズプラン(入金額1万ドル、当時の為替レートで約150万円)の利率は2~3%だったが、最上位の特別指導プラン(入金額200万ドル、約3億円)では22~30%もの高利率を謳っていた。どの金融商品で運用するのかは説明されなかったが、男性の心は動いた。
アプリが仕掛けた罠
参加を申し込むと、運用実績が確認できるというアプリのインストールを指示された。このアプリこそが、投資詐欺と見破らせないための最大の仕掛けだったと男性は後悔する。アプリ上では実際の取引のように見せかけた数字が表示され、利益が出ているように錯覚させられた。最初の入金後、順調に利益が上がっているように見えたため、追加の入金を繰り返した。
しかし、出金しようとすると様々な理由をつけて拒否されるようになり、連絡も途絶えた。男性はようやく詐欺に気づき、警察に相談したが、既に約9000万円を失っていた。
専門家が指摘する詐欺の見分け方
投資詐欺の手口は年々巧妙化している。専門家は、以下のポイントに注意するよう呼びかけている。
- 高すぎる利率を約束する:通常の投資で数%の利率が一般的な中、月10%以上の利率を謳うのは危険。
- 認可や公認を偽る:大手証券会社や金融庁の認可を装うケースが多い。
- 出金を渋る:利益が出ているのに出金できない場合は詐欺を疑う。
- アプリや専用サイトで取引を偽装:実在の取引所を模したフェイクサイトやアプリを使う。
男性は「老後資金の不安につけ込まれた。『うまい話には裏がある』という基本を忘れてはいけない」と訴える。SNS上の投資話は特に注意が必要で、少しでも怪しいと感じたら、家族や金融庁の相談窓口に連絡してほしい。
被害防止のために
金融庁は、SNS型投資詐欺の被害防止に向け、注意喚起を強化している。具体的には、以下の対策を推奨している。
- 知らない人からの投資話は無視する。
- 公式の連絡先を確認する。
- 振り込む前に家族や専門家に相談する。
- 金融庁の登録業者かどうかを確認する。
この記事が、同様の被害を防ぐ一助となることを願う。



