知床遊覧船事故公判、元従業員「条件付き運航の案内指示されず」と証言
知床事故公判、元従業員「条件付き運航案内指示されず」

知床遊覧船事故公判、元従業員が「条件付き運航」案内の指示なかったと証言

2022年に北海道・知床半島沖で発生した遊覧船沈没事故で、26人が死亡・行方不明となった事件の第5回公判が16日、釧路地裁で開かれた。業務上過失致死罪に問われている運航会社「知床遊覧船」の桂田精一被告(62)の裁判で、事故当時の従業員らが証言に立った。

「条件付き運航」の案内指示はなかった

乗客の受付を担当していた元従業員は、海が荒れた場合に引き返す「条件付き運航」を前提とした案内を「指示されなかった」と明言した。これまで、条件付き運航が決まった際には、事務所の入り口前に掲示したり、受け付け段階で乗客に直接説明したりする慣行があった。通常、運航日の前日から出航1時間前までに連絡があったという。

さらに、船の出航を見送った別の従業員も、船長からのアナウンスが条件付き運航を伝える内容ではなかったと証言。これらの証言は、事故当日の運航判断に関する重要な証拠として注目されている。

検察と弁護側の主張が対立

検察側は、桂田被告が通常のコースで運航すると把握しながらも、航行を中止する指示を出さなかったと主張。安全対策の不備を指摘し、業務上過失致死罪の立証を進めている。

一方、弁護側は反論し、被告は悪天候になる前に「引き返す」と認識していたが、船長が独断で異なる航路を選択したため事故が発生したと主張。責任の所在を船長の判断に求める姿勢を示した。

地元漁師の証言で事故当日の状況が浮き彫りに

この日の公判では、地元漁師も証人として出廷。事故当日の早朝、漁のために漁船を出したが、風が強すぎて「これ以上続ければけが人が出る、下手したら死人が出ちゃう」と判断し、引き返した経験を語った。

帰港後、沈没した遊覧船の船長と遭遇し、「漁師のうちらでも帰ってきてるのに、それでも行くのかい?」と尋ねたところ、船長は「お客さんも待ってるからさ。行けるところまで行ってみる」と返答したという。漁師は「これから(風が)吹いてくるのに、本当に乗っていくんだ」と当時を振り返り、危険を感じていたことを証言した。

この事故をめぐっては、安全運航の基準や責任の所在が焦点となっており、今後の裁判の行方が注目される。公判は引き続き、関係者の証言や証拠の検証が行われる予定だ。