駅員や公務員でも茶髪や軽装、就業中の身だしなみルール緩和が広がる…働く意欲向上にも効果
駅員や公務員でも茶髪や軽装、身だしなみルール緩和が広がる

企業や自治体で就業中の身だしなみのルールを緩和する動きが広がっている。髪形や装飾品、服装などについて自分らしく働ける環境を整えることで、働き手の確保や意欲を高めるなどの狙いがある。ルールの緩和は働きやすさだけでなく、顧客に対するサービス向上にも一役買っているようだ。

憧れだった髪色で接客

4月14日、東京駅の改札。髪を明るめの茶色に染めた東京メトロの駅員、岩上音央さん(28)は、道を尋ねてきた外国人観光客に対し、英語と大きなジェスチャーを交えて駅構内を案内。満足した観光客から「サンキュー」と声をかけられ、満面の笑みを返していた。

岩上さんは、東京メトロが2025年5月に駅員や乗務員の働きやすさ向上を目的に、身だしなみルールを改正したことをきっかけに髪を茶色に染めた。すると、外国人観光客から就業中に声をかけられることが増えたという。新しい髪色は妻や友人からも好評だといい、「第一印象を悪くしないよう、表情や言葉遣いにより気を使っている。憧れだった髪色にできて、働く意欲につながった」と語った。

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東京メトロは男性の髪について、改正前までは「染色していない自然な髪色」と定めていたが、男女ともに髪の明るさは、NPO法人「日本ヘアカラー協会」が公表する12段階(レベル4~15)のうち、レベル4からレベル11まで認めた。長髪やマニキュア、ピアスの装着ルールも男女の基準を統一した。

東京メトロの社内ルール改正に携わった営業企画課の高橋壮永さん(25)は「働きやすさだけでなく、見られ方への意識が接客時の表情や言動などのサービスにもつながる」と狙いを話す。航空会社への視察などを行い、社員自ら利用者目線で身だしなみを考える取り組みを参考にしたという。

TPOに応じて判断

こうした身だしなみルールの緩和は、堅いイメージのある自治体にも波及している。東京都国立市では試行期間を経て25年11月、市役所内で働く職員の服装のルールを「不快感を与えない節度を持った服装」を基本とした上で、「職員自らTPO(時と場所、場合)に応じた服装かを判断する」とした。当初は服装に戸惑う職員からの問い合わせが相次いだが、次第に外部との打ち合わせ時にはジャケットを羽織り、デスクワークが多い日はトレーナーやTシャツなど、業務に応じて服装を選ぶようになったという。

窓口で保護者とのやり取りが多い児童青少年課の黒川皓介さん(35)は「バシッとしたスーツでは身構えられるように感じていた。保護者や子どもとコミュニケーションが取りやすくなった」と評価する。取り組みを主導している職員課の鈴木歩さん(39)は「大事なのは一人一人が市民に誠実に対応すること。TPOに応じた服装を選ぶことは、市民が何を求めているかを考えることにも通じ、今後の施策のアイデアにつながるかもしれない」と話した。

企業の採用戦略の一つに

就職情報会社「マイナビ」(東京)などが行った調査によると、18~25歳の若者世代の7割近くが職場での自由な服装や髪形を希望していた。身だしなみルールの緩和は、企業の採用戦略の一つになっていることがうかがえる。調査は2022年9月、インターネット上で若者世代213人を対象に行われた。希望する職場の服務規程を3択で尋ねたところ、「服装・髪形が完全自由」(68.5%)が最も多く、身だしなみの自由を重視する意識が高いことが明らかになった。次いでポロシャツやセーターといった働きやすい「オフィスカジュアル」(18.8%)、「制服(作業着)の着用」(12.7%)が続いた。

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身だしなみルールの緩和について、千葉商科大の常見陽平教授(労働社会学)は「人手不足が続く中、企業側が選ばれる職場になろうと取り組んでいる。特に堅いイメージの業界では学生の選択肢に入る効果がある。社会の寛容性の変化も影響しており、今後もこうした動きは続くだろう」と話した。