大教大付属池田小事件で娘失った母、開設したライブラリー「ひこばえ」に込めた願い
大教大付属池田小事件で娘失った母、開設したライブラリーに込めた願い

樹木の切り株から生える若芽を「ひこばえ」という。幹や枝葉を切られても、根は生きている証しだ。2001年6月8日、大阪教育大付属池田小学校で起きた児童殺傷事件で亡くなった本郷優希さん(当時7歳)は、根元から伐採された切り株に「かわいそう」と心を寄せる優しい子だった。母親の由美子さんが「ここから芽がでるの、ひこばえというんだよ」と教えると、「へぇ、すごい」と感動したそうだ。

由美子さんに初めて取材したのは事件の4日後だった。教育実習の先生に憧れていたこと、新体操に挑戦していたこと、ピアノの発表会に向けて練習中だったこと……。絶望の底で気力を振り絞って優希さんの話をしてくださった。「抱きしめると優希のにおいがする」と冬の制服を洗濯できないことも。4年後、由美子さんは対話を通じて心の支援をする「精神対話士」の資格を取得した。他者の「かなしみ(グリーフ)」に寄り添う「グリーフケア」を学び、読書が持つ癒やしの力に目を向ける。2020年、東京都内にライブラリーを開設。本が並ぶ空間を「ひこばえ」と名付けた。

ひこばえに森を再生する力があるように、人間の心にも、必ず再生の芽吹きは訪れる。本に囲まれた癒やしの空間は、優希さんの命の証しでもあるだろう。奪われた命の重み、遺された者の痛み。由美子さんの25年が教えてくれる。

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