海外赴任中の過労死防止へ企業に求められる対応とは?制度の限界と遺族の訴え
海外赴任中の過労死防止へ企業に求められる対応とは

海外勤務には特有の厳しさがある。言語の壁や日本本社との時差に加え、治安や医療体制が日本よりも劣る国も少なくない。グローバル企業に勤める者にとって、海外の関連会社で働いたり、長期出張に出向いたりすることは珍しくない。しかし、これまで海外赴任中の過労死事案の実態は見えにくかった。

海外赴任中の過労死の実態

日本国内とは異なる環境で働く人の安全や健康を守る対応には、企業によって差があることが、当事者が声を上げることで明らかになってきた。プラント大手のカナデビア(旧日立造船)と共同で安全衛生マニュアルづくりに取り組んできた上田直美さんは、その一人だ。上田さんは、タイに駐在中だった長男の優貴さん(当時27)を、過労による自死で失った。

国内と海外で働く場合の違い

海外派遣者には原則として日本の労働基準法や労働安全衛生法が適用されない。仕事が原因で病気やけがになっても、日本国内とは異なる制度が適用される。海外派遣者は原則として労災保険の対象外であり、海外派遣者のための「特別加入制度」があるが、手続きは企業の任意だ。労災保険の対象となる「海外出張」との区別も分かりにくい。

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川崎重工は責任を認めて和解した事例もある。しかし、海外派遣で労災に特別加入するかどうかは企業の判断に委ねられており、制度の限界が指摘されている。

企業に求められる対応

遺族の訴えを受けて、一部の企業は安全衛生マニュアルの整備やメンタルヘルスケアの充実を進めている。しかし、全ての企業が同様の対応を取っているわけではない。専門家は、海外赴任者の労働環境を定期的に評価し、現地の医療機関との連携や緊急時の対応策を事前に準備する必要性を強調する。

また、本社と現地拠点とのコミュニケーションを密にし、過重労働の兆候を早期に発見する仕組みづくりが重要だ。特に、時差や言語の壁によるストレスが蓄積しやすいため、定期的な面談やアンケート調査を実施することが推奨される。

制度の限界と今後の課題

海外派遣者に対する法的保護が不十分な中、企業の自主的な取り組みに頼らざるを得ない現状がある。労災保険の特別加入制度をより利用しやすくする法改正や、国際的な労働安全基準の策定が求められている。遺族の声をきっかけに、海外赴任中の過労死防止に向けた社会的な議論が活発化することが期待される。

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