「依存症みたいになっていたと思います」。愛知県あま市の会社経営男性(当時55)を殺害し、琵琶湖に遺棄したとして強盗殺人や死体遺棄などの罪に問われた市橋由衣被告(29)の裁判員裁判が10日、大津地裁で開かれ、被告人質問が行われた。犯行に至るきっかけとなったホストクラブ通いによる借金などについて、被告が自らの言葉で語った。
被告の生い立ちとホストクラブ依存
愛知県北名古屋市出身の被告は、県立高校を卒業後、兄や奨学金を頼りに私立大学に進学。高校の教員を目指していたが、経済的な理由で退学した。在学中からキャバクラ店に勤めており、退学後は奨学金返済などのために風俗業界で働いた。風俗の仕事では嫌なことが多く、その頃からホストクラブ通いが始まったという。
風俗の収入は多い時で月250万円に上ったが、ホストクラブには月500万円を注ぎ込むこともあった。「行かないと生きていけなかった。寂しいから」と被告は述べ、ホストクラブ通いの理由についてギャンブルやアルコールと同様の「依存症」であったと認めた。
金銭獲得の手段と事件の計画
不足する資金を補うため、被告は風俗の客を店外デートに誘い、金銭を得ていた。共犯者の加藤徹被告(47)や被害者の男性も客の一人だった。被告は、お金を提供してくれる男性に対して好意がなくても、自分の名前を書いた婚姻届を渡していたことが明らかになった。
事件前には、借金の取り立てが厳しくなり、家族に知られることを恐れた被告は、金を持っていると分かっていた被害者男性の自宅への強盗を計画。自分に好意を寄せていた加藤被告に協力を依頼した。その背景には、以前に強盗殺人事件のニュースを見た際、被告が「殺すのはなかなかできんよね」と話したところ、加藤被告が「俺、好きな人のためならできちゃうかも」と応じたことがあったという。
法廷での被告の心境
強盗殺人罪の法定刑は無期懲役か死刑。弁護人から社会に戻りたいか問われると、「やり直したいと思います」と被告は答えた。被害男性に対しては、「奪ってしまった尊い命に思いを巡らせて罪を振り返っていきたい」と述べた。前日の証人尋問で「(今も市橋被告への好意は)あります」と証言した加藤被告について、弁護人から「申し訳ないと思っているか」と尋ねられると、「はい」と小さく答え、高い位置で一つに結んだ長い髪を揺らした。
事件の背景と今後の公判
行き過ぎたホストクラブ通いが招いた悲劇について、被告は「やりすぎだった自覚はある。私は異常だった」と振り返った。11日には論告求刑公判が開かれる予定で、裁判の行方に注目が集まる。



