熊本地震題材に映像作品、大津高メディア放送部が伝える記憶「復興と言うが元に戻らない」
熊本地震題材に映像作品、大津高メディア放送部が伝える記憶

熊本県立大津高校(大津町)のメディア放送部が、2016年4月に発生した熊本地震をテーマに映像作品を制作している。4作目となる2025年の作品「山野揺れて」では、被災者らのインタビューなどを収録。同世代に「地震を忘れない」「地震の先にある未来を作っていこう」というメッセージを届けている。

卒業生や防災士ら20人取材

「忘れてはいけない記憶がある。忘れられない記憶がある」。約8分間の作品は、静かなナレーションで始まる。震度7で激しく揺れる様子を再現した映像が映り、崩落した阿蘇大橋付近の映像とタイトルが映し出される。作品のため、卒業生やその家族に加え、語り部、医師、防災士ら約20人を取材した。一度の取材時間は1~2時間で、合計24時間以上かかったという。

卒業生で、同高の美術を担当する西田佳世講師(27)も、3年時に手がけた絵と登場する。自身をモデルにした女子生徒が壁を拳でたたき割ろうとしている絵で、壁は地震で割れた地面をモチーフにした。被災を乗り越えて未来に立ち向かう決意を表現したといい、作品内で西田講師は「当時の気持ちでしか、つらい状況の中でしか描けなかった」と振り返った。

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制作の苦労と込めた思い

「九州高校放送コンテスト」に出展するため、上限となる8分間に収めた。短くしようと、被災者の思いや復興にかける願いを象徴的に示す場面、証言を選ぶのに苦労したという。取材した分を使わないのは心苦しく、全部見てほしいという思いもあった。3年の部長(18)は「『地震からの復興』と言うが、決して元に戻らないことを一番に伝えたかった」と作品に込めた思いを語った。

同高には地震で大きな被害が出た阿蘇市、南阿蘇村といった山間部と、熊本市など平野部から生徒が通う。タイトルの「山野」は、生徒たちの生活圏という意味が込められた。

「全国高校総合文化祭」に向け新作

「山野揺れて」は、昨年の九州高校放送コンテストのテレビ番組部門で、優良賞を受賞した。制作を通じて熊本地震の学びを深める姿に、顧問の大塚章史教諭(62)は「被災者らのメッセージを紡いで伝えることができている」と評価する。メディア放送部では、地震をテーマにした作品作りを進める。2020年に初めて作った作品は、不通となったJR豊肥線の全線開通を取り上げた「蘇る路」。同コンテストのテレビ番組部門で、準優勝に輝いた。

部員は熊本地震10年の節目に合わせた映像を制作中だ。未発表作品が対象のため、内容を明かせないが、7月に秋田県で開催される「全国高校総合文化祭」で初披露されるという。

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