科捜研不正の余波が法廷に広がる「鑑定はブラックボックス」再審請求も視野に
科捜研不正の余波が法廷に広がる「鑑定はブラックボックス」

犯罪捜査の切り札とされる科学鑑定への信頼が揺らいでいる。発端は、佐賀県警の科学捜査研究所(科捜研)で発覚した不正事件だ。元職員が懲戒免職となり、8年にわたりDNA型不検出と虚偽報告をしていたことが明らかになった。この余波は法廷にも波及し、科学鑑定の信頼性が根本から問われている。

法廷での不信感

刑事事件では、検察側の立証は供述内容や鑑定結果などの証拠書類を裁判官が採用すれば、法廷で概要を口頭説明するだけで済む。しかし、科捜研のDNA型鑑定不正が起きた佐賀では、弁護士が科学鑑定そのものへの不信を強めている。

朝日新聞の取材によると、不正発覚後の2025年9月から2026年6月までの間、佐賀地裁やその支部で少なくとも5件の裁判において、弁護側が鑑定証拠を信用できないとして不同意を表明した。弁護側が鑑定結果の証拠調べに同意しなければ、検察側は別の方法で立証する必要に迫られる。

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検察側の対応

検察側は次の手として、鑑定を実施した科捜研職員の法廷証言を活用している。2026年4月、麻薬取締法違反事件の佐賀地裁公判では、スーツ姿の科捜研職員が証言台に立った。弁護人が「鑑定手順などを記録するワークシートは作っていないのか」と尋ねると、職員は「作っていない」と答え、「メモという形で記録を残した」と説明した。

このような証言は、鑑定の信頼性に疑問を投げかけるものであり、弁護側はさらに追及を続けている。科学鑑定のプロセスが不透明であることから、弁護士の間では「鑑定はブラックボックス」との声が上がり、再審請求の検討も始まっている。

今後の展望

この事件は、科学鑑定の管理体制や透明性に大きな課題を突きつけた。佐賀県警は再発防止策を講じるとしているが、法廷での影響は長期化する可能性がある。弁護側は、不正が行われた鑑定結果を用いた過去の事件についても再審請求を視野に入れており、司法全体への波及が懸念される。

科学鑑定は捜査の要であるだけに、その信頼回復には時間がかかると見られる。今後の法廷での議論が、鑑定の在り方を変える契機となるか注目される。

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