知床遊覧船事故裁判で元海保講師が衝撃的証言「転覆可能性7~8割」
2022年に北海道・知床半島沖で発生した遊覧船沈没事故で、業務上過失致死罪に問われた運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(62)の第6回公判が17日、釧路地裁で開かれた。この日の公判では、元海上保安官で日本船舶職員養成協会(JEIS)の講師が証人として出廷し、事故船「KAZUⅠ(カズワン)」の構造的脆弱性と荒天下航行の危険性について詳細な証言を行った。
船体素材の脆弱性と荒天下航行の危険性
元海上保安官の講師は、事故船に使用されていた素材が衝撃に弱い特性を持っていることを指摘。具体的に「荒天下で航行を継続した場合、船体が波に打ち付けられることで衝撃が加わり、船体に亀裂が生じる可能性がある」と説明した。さらに、そのような状況下では「亀裂から浸水が発生し、最終的に沈没に至る危険性が高い」と述べ、素材の特性が事故の一因となった可能性を示唆した。
転覆危険性「10のうち7~8」との具体的数値
裁判官からの質問に対し、講師は事故当日の気象条件下における転覆事故の可能性について「転覆する危険性の度合いは大きい」と断言。具体的な数値として「10段階評価で7から8程度の確率で転覆が発生する危険があった」と証言した。この評価は、当時の船長の操船経験が浅かったことを重要な要因として考慮した上での判断であると説明された。
一方で、講師は「操縦経験が豊富な船長が指揮を執っていれば、9割方無事に帰港できた可能性が高い」とも続け、船長の経験不足が事故の重大な要因となったとの見解を示した。この発言は、運航管理体制の不備についても間接的に指摘する内容となっている。
検察側と弁護側の主張の対立
検察側は、悪天候が予測されていたにもかかわらず、運航管理者である桂田被告が船長に出航中止を指示しなかった点を強く批判。安全運航義務を怠ったとして刑事責任を追及している。
これに対し、弁護側は事故原因を「甲板ハッチのふたが確実に閉まらない不具合が見過ごされ、そこから浸水が発生したため」と主張。運航管理者の過失ではなく、船舶の整備・点検の問題が主因であるとの立場を明確にしている。
漁師の証言から見える安全意識の差
この日の公判では、事故当日に漁に出る予定だった地元漁師の男性も証人として出廷。前日の天気予報を受けて「安全に航行できない可能性が高い」と判断し、自主的に漁を取りやめた経緯を明かした。この証言は、地域の漁業関係者らが悪天候時の危険を的確に認識し、安全最優先の判断を下していたことを示しており、遊覧船運航側の判断との対比が鮮明となった。
知床遊覧船事故は2022年4月に発生し、乗客・乗員26名全員が死亡または行方不明となるという痛ましい結果に終わっている。事故から約2年が経過した現在も、刑事裁判では運航管理者の責任の有無が争われており、今後の審理の行方が注目されている。