日野町事件、再審開始確定 長男は「うれしいが悔しい」 検察不服申し立てで14年
日野町事件再審開始 長男「うれしいが悔しい」14年 (25.02.2026)

日野町事件で再審開始確定 長男は喜びと悔しさ交錯

「うれしくて涙が出てくる」。滋賀県日野町で1984年に発生した強盗殺人事件において、無期懲役が確定し服役中に病死した阪原弘さんの遺族による再審の2次請求から約14年を経て、ついに弘さんの再審開始が決定した。大阪市内で弁護団と会見に臨んだ長男の弘次さん(64)は、顔をほころばせると同時に、長期化した審理に対する悔しさを隠さなかった。

14年に及ぶ再審請求の道のり

2011年、無罪を訴え続け再審の1次請求を申し立てた弘さん本人が死亡したため、請求審の手続きは大阪高裁で終了。翌年、弘次さんら遺族が遺志を引き継ぎ第2次請求を申し立てた。大津地裁では2018年に再審が認められたものの、検察側が不服申し立てを繰り返した結果、確定までさらに7年以上の歳月を要することとなった。

弘次さんは今年1月の取材で「審理が長引くと、悪い決定を裁判所が出そうとしているのかなという思いになったりする」と心情を明かしていた。待ち望んだ決定についても「うれしかったが、ここにくるまでのプロセスを考えると悔しい」と語り、複雑な胸中を吐露した。

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「父は今でも生きていると思う」

弘さんが再審を申し立ててから25年。弘次さんは「1次請求で再審が始まっていたら、父は今でも生きていると思う。なぜこんなに長くかかったのか。かかりすぎやと思う」と憤りをあらわにした。

弁護団の石側亮太弁護士は「事件はずさんな捜査や公判のおかしさが典型的に詰まったもの。当時から何も変わっていない」と批判。「本来であれば阪原さんとともに会見をしたかった。この時期の再審開始決定は弁護団としては残念」と唇をかんだ。

家族の願いと支援の輪

夫・弘さんの無実を信じ続けたつや子さん(88)に、弘次さんが電話で決定を伝えると「良かったなあ」という言葉が何度も返ってきたという。つや子さんは高齢になり、近頃は体調の優れないことも増えている。

大津地裁で始まる再審公判に向け、弘次さんは「速やかに無罪を確定させてほしい」と強く求める。全員で墓前に「父ちゃん、やったよ。再審無罪勝ち取ったよ」と伝えることが家族の切なる願いだ。

専門家が指摘する検察不服申し立ての問題点

龍谷大学の斎藤司教授(刑事訴訟法)は、審理が長期化した今回の事件について「検察官の不服申し立ての問題点がまさに表れている」と指摘。再審制度の見直しを議論した法制審議会が検察官の不服申し立てを維持する結論を出したことに対し、その妥当性に疑問を呈した。

「間違った判断の具体的な根拠が示された場合は、速やかに再審を始めるべきだ」と主張する斎藤教授は、証拠開示に関しても「再審の請求理由に関連する証拠」と縛りを付ける法制審の姿勢が、開示を限定的にする可能性があると懸念を示した。

冤罪被害者たちの連帯

1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)であった一家4人強盗殺人事件で再審無罪となった袴田巌さん(89)の姉ひで子さん(93)は、国会内で再審制度改正を求める集会に参加中、日野町事件の再審開始確定を聞き「本当に良かった」と声を弾ませた。

集会には弘次さんも参加しており、吉報がもたらされるとひで子さんと抱き合い、笑顔で握手を交わす場面も見られた。ひで子さんらは検察による不服申し立ての全面禁止を盛り込んだ議員立法による再審制度改正を求め、「ぜひ今国会で成立させてほしい」と訴えた。

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「無罪のバトン」を受け継ぐ者たち

1986年の福井中3殺害事件で服役し、昨年8月に再審無罪が確定した前川彰司さん(60)は「自分の判決に続き、この事件も無罪を勝ち取ってほしい」と願った。前川さんは東京都内での集会で日野町事件の「特別抗告棄却」の一報を耳にし、弘次さんに駆け寄って「きょうで、無罪のバトンは渡したからね」と伝え、笑顔で握手を交わしたという。

奥西勝・元死刑囚が89歳で獄中死した名張毒ぶどう酒事件の弁護団長を務める鈴木泉弁護士は「われわれも死後再審を求めており大きな励みになる」と喜びを語った。弁護団は1月に第11次再審請求を申し立て、検察側に全証拠の開示を求めている。

鈴木弁護士は「名張事件でも多くの未開示証拠を検察が握っている。日野町事件や袴田事件の教訓を生かし、全面的な開示を求めたい」と強調し、冤罪救済に向けた連帯の重要性を訴えた。