メス1匹のみで繁殖する特定外来生物のザリガニ「ミステリークレイフィッシュ」が、ここ1~2年の間に野外で相次いで確認されている。沖縄県では既に定着が確認され、愛媛県では少なくとも600匹以上が捕獲された。ペットとして飼育されていた個体が流出した可能性が高く、専門家は他の地域でも生息が広がっている恐れを指摘する。生態系への悪影響が懸念され、環境省は危機感を強めている。
沖縄での定着と駆除の取り組み
那覇市中心部にある天久ちゅらまち公園の池は、ネットで封鎖され、「立ち入り禁止」「利用制限」のプレートが掲示されている。2024年8月、子どもが池でザリガニを釣り上げたことがきっかけで、ミステリークレイフィッシュの存在が明らかになった。環境省の出先事務所が調査したところ、数十匹が捕獲され、幼体も確認されたため、国内初の「定着」事例と判断された。その後、近くの小学校のビオトープや隣接する浦添市でも発見された。
那覇市は発見後、池への立ち入りを制限し、2026年秋には根絶に向けた大規模な駆除作業を計画している。1ミリ程度の網目で水を抜き、底の泥をセメントで固め、コンクリートで蓋をして水を入れ直すという徹底した方法をとる。市公園管理課の羽地朝哉さんは「驚異的な繁殖力があり、広がれば取り返しがつかない。徹底して駆除する」と語る。
愛媛県でも多数確認、定着の可能性
2025年5月、松山市内の泉で2匹のミステリークレイフィッシュが発見された。愛媛県が同年8月から2026年1月にかけて実施した捕獲調査では、計625匹が確認され、関係者に衝撃が走った。2026年5月にも5匹が捕獲されている。県生物多様性センターは「定着している可能性は極めて高い」とし、個体数と生息範囲の調査を進めている。
ミステリークレイフィッシュの特徴
環境省によると、ミステリークレイフィッシュはアメリカザリガニ科に分類され、成体の体長は最大約10センチ。体にはまだら模様があり、「マーブルクレイフィッシュ」とも呼ばれる。オスは存在せず、メス1匹で繁殖する。水温8~30度で生存可能で、1回に数百個の卵を年数回産むという調査結果もある。
突然変異で生まれたとされ、原産国は不明だが、1995年にドイツでペットとして広まった。日本では2000年前後に流通し始め、ペットショップなどで1匹500~1000円程度で販売されていた。
野外に広がると、在来の動植物を捕食し、他の生物の生息環境を奪い、生態系にダメージを与える。また、水田に穴を掘って稲を切断するなど、農業被害をもたらす恐れもある。
規制と対策の強化
環境省は2020年、外来生物法に基づきミステリークレイフィッシュを特定外来生物に指定し、輸入や飼育を禁止した。しかし、その後も発見が相次いでいる。同省はアメリカザリガニと誤認されて見逃されている可能性を考慮し、2026年度に識別方法や発見時の通報先を記したチラシを刷新した。さらに、自治体が駆除に使用できる補助金を増額し、対策を強化している。担当者は「これ以上の定着を阻止しなければならない。疑わしい個体を見つけたらすぐに連絡してほしい」と呼びかけている。
特定外来生物に指定されている外来ザリガニには、ミステリークレイフィッシュのほか、北米原産のウチダザリガニも含まれる。いずれも飼育や放流、譲渡は原則禁止で、違反した場合、法人は最大1億円、個人は最大300万円の罰金または3年以下の拘禁刑が科される。一方、戦前に食用ウシガエルの餌として輸入され、全国に定着したアメリカザリガニは条件付き特定外来生物で、飼育や無償譲渡に許可が不要など規制が異なる。
専門家の見解
ザリガニの生態に詳しい金沢大学の西川潮准教授(保全生物学)は、「繁殖力の強さと環境適応力の高さから、生息域が広がっていても不思議ではない」と指摘する。認知度の低さが問題であり、周知と啓発の必要性を強調している。



