性売買の現場で女性に課される「心構え」 売防法改正議論の中で浮かび上がる実態
売買春の「買う側」の規制も視野に入れた売春防止法の改正に向けた検討が、法務省で始まった。現行の売防法が禁じるのは「性交」のみであり、風営法のもとで性交以外の「性的サービス」を提供する業態が次々と生み出されている。その結果、性風俗産業は巨大な市場を形成しており、いわゆる「合法」な性売買の現場では、独特の慣行が存在していることが明らかになった。
「辛くて当たり前、嫌で当たり前」 風俗店が示す文書の内容
神奈川県のある店舗型ファッションヘルスでは、働き始める女性従業員に対して、特定の文書を示す慣行がある。その文書には、「辛(つら)くて当たり前、嫌で当たり前」という文言が記されており、さらに「平気という女性は、手抜きをしているのです」と続く。この表現は、仕事に対する基本的な心構えを強調するものだ。
文書には、具体的なサービス内容から男性客の性格に合わせた接客手法まで、細かく記載されている。経営者である30代の男性は、「女性が稼ぐために必要」と主張し、新人の女性にこの文書を声を出して読ませることを習慣としている。例えば、「お客様の足の裏、指を舐(な)める」といった行為も含まれるという。
経営者の主張と専門家の指摘
経営者は、この文書が女性従業員の収入向上に不可欠だと説明する。しかし、批評家で日本映画大学准教授の藤田直哉氏は、性的サービスにおける本質は膣を使った性交の有無ではなく、金の力で相手を支配し優越性を満たす欲望にあると指摘。社会的・経済的に立場が弱い人間が従属的で屈辱的な行為を強いられる構造を問題視している。
脚本家の梶原阿貴氏も、約25年前に風俗嬢の役作りのためピンクサロンを取材した経験を振り返り、現場の複雑な人間関係を語る。彼女たちは男性客を「何人…」と表現し、仕事に対する複雑な感情を抱えていたという。
売防法改正を巡る議論と現場の課題
売春防止法の見直しでは、「買う側」の処罰を導入するかどうかが焦点の一つとなっている。現在、性交以外のサービスは合法とされているため、風俗産業は拡大を続けており、女性従業員の労働環境や心理的負担が課題として浮上している。
無料案内所や風俗店が立ち並ぶ東京・新宿区の歌舞伎町では、2026年3月21日に撮影された写真が、活気ある一方で陰の部分を映し出す。関連ニュースでは、人身取引被害や夜職の女性の窮状が報じられており、性風俗産業の闇の側面が強調されている。
この問題は、単なる法律改正だけでなく、ジェンダーや福祉の観点からも議論が必要だ。上野千鶴子氏は、福祉が風俗に勝てない現実を指摘し、それが果たして女性の真の選択なのかを問いかけている。今後、法改正の行方とともに、現場の声をどう反映させるかが注目される。



