成人後の受け入れ施設見つからず…強度行動障害の息子と家族の苦悩
成人後の施設見つからず…強度行動障害の息子と家族の苦悩

成人後の受け入れ施設見つからず…強度行動障害の息子と家族の苦悩

関東地方に住む60歳の女性には、難病を患い、強度行動障害と重度の知的障害のある24歳の次男がいます。次男は16歳で「障害児入所施設」に入所しましたが、18歳の時に年齢制限により退所を余儀なくされました。その後、成人向けの受け入れ先が見つからぬまま、女性は苦悩の日々を送っています。

淡い期待と絶望の繰り返し

女性は次男の受け入れ先を探すため、障害者施設の資料をとじたファイルを見ながら、定期的に電話をかけています。「もしかしたら、と淡い期待を抱いては、入所を断られて絶望する。その繰り返しです」と女性はため息をつきます。夫(60歳)と長男(26歳)、次男と4人で暮らす家族は、次男のケアに追われる毎日を過ごしています。

次男は、着替えや入浴、排せつなどに介助が必要で、環境の変化などで不安や緊張が高まると、突然パニックになって自分を傷付けたり、他人に暴力をふるったりすることがあります。こうした激しい行動が「対応が難しい」と施設側に判断されてしまうのです。「自宅に近い施設は50人以上が待機中。不謹慎ですが、入所者が亡くならなければ空きが出ません。定員に空きのある施設に申し込んでも断られる。手のかかる次男はどこにも受け入れてもらえない……」と女性はうなだれます。

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突然の暴力と家族の苦闘

穏やかだった次男の様子が変わり始めたのは、特別支援学校高等部に入学した頃でした。ある日、外出中に女性が次男に予定変更を提案すると、次男は突然、女性を路上に押し倒して馬乗りになり、顔や体を殴り始めました。女性は「次男が他人に危害を加えたら大変なことになる」と助けを求めず、バッグに入れていた精神を安定させる薬を次男の口に放り込みました。次男が落ち着くまで、ひたすら殴られ続けたのです。

次男は自宅にいても、自分の腕を爪でひっかいて骨が見えそうなほど深く傷付けたり、女性や長男を強くたたいたりするようになりました。「このままでは死んでしまう」と感じた女性は、単身赴任中だった夫に帰宅してもらい、夫婦で次男を精神科病院へ連れて行きました。激しい行動は生まれつきの難病に伴うもので、ストレスや不安によって生じる強度行動障害だと説明されました。

児童相談所では、「家庭養育は困難」と判断され、次男は高等部1年の冬、親と離れて専門的な支援を受けながら暮らす「障害児入所施設」に入りました。「親として申し訳ない思いがしたが、ホッとした」と女性は振り返ります。

18歳の壁と施設探しの困難

しかし、この施設の利用は原則18歳まで。その後は原則、成人対象の「障害者支援施設」などに移ることになり、新たな契約が必要になります。そのため、女性は次男が18歳になる前から退所後の施設探しに奔走しました。

自宅から遠く離れた施設や小規模のグループホームなども訪ねましたが、「強度行動障害への対応は難しい」という返事ばかり。ある施設で「受け入れてどんなメリットがあるんですかね」と言われた時は、行き場のない怒りがこみ上げ、帰りの車の中で一人むせび泣いたといいます。

現在の状況と家族の願い

次男は特別支援学校の卒業と同時に自宅へ戻り、現在、平日の日中は障害者施設に通っています。職員らの支援のおかげで、以前に比べて落ち着いたものの、2~3か月に1度、パニックを起こして人が変わったように暴れることがあります。「次男が悪いわけじゃない、困っている状態なんだと頭では分かっている。けれど、手に負えないと思ってしまう」と女性は打ち明けます。

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夫婦ともに還暦を迎え、「この先、いつまで次男の世話を続けられるだろうか」と不安が募ります。長男には次男のことで迷惑をかけたくないと考えています。「私が元気なうちに、次男が家を出て安心して暮らせる施設を見つけたい。ただそれだけが、私の願いです」と切実に語ります。

行政の支援の必要性

障害のある人や家族らの団体「全国障害児者の暮らしの場を考える会」(東京)が2025年に実施した調査によると、18歳以上の障害者の家族の90.2%が、親亡き後の生活を「心配」と回答。ケアに限界を感じている人は約6割に上りました。

佛教大教授(障害者福祉)の田中智子さんは「重度の障害者ほど、家族がケアを背負っているのが現状です。親亡き後を憂え、子どもを手に掛ける事件も起きています。障害者が家族に頼らなくても暮らせるように、行政は専門職員の養成や施設整備など、支援体制の強化に力を入れるべきです」と指摘しています。