脳死状態となった人からの臓器提供は近年増加傾向にあるが、移植に関わる病院の体制整備が遅れている。臓器移植しか助かる道がない患者を一人でも多く救える仕組みを整えることが急務である。
診療報酬改定の影響
今年6月から診療報酬が改定され、脳死臓器移植への報酬が大幅に引き上げられた。手術料が従来の5倍になるなど、手厚い加算が適用されるようになった。臓器移植では通常の外科手術よりも多くの医療スタッフが必要であり、ドナーと患者の橋渡しをするコーディネーターなどの人材も不可欠である。従来はこうした事情が考慮されず、人件費などの多くを病院側が負担していた。一般的な手術よりも経費がかかることを踏まえた今回の報酬改定は妥当な措置と言える。
ドナー増加の現状
日本は脳死者からの臓器提供が他国に比べて極端に少ないが、それでも昨年は過去最多の146件となり、5年前から倍増した。この背景には、2023年に日本人患者への違法な海外臓器移植あっせん事件が発覚し、臓器移植に関する報道が増えて関心が高まったことが一因とされる。しかし、それに医療体制が追いついていない実態も明らかになった。
病院の受け入れ体制不足
東京大学や京都大学など、移植を手がけてきた主要な病院では、待機中の患者に移植の機会が巡ってきても、設備や人員の不足からすぐに手術に対応できず、移植を断念するケースが相次いでいる。脳死ドナーが現れた場合、待機患者は重症度などに応じた優先順位に沿って提供を受けるが、受け入れ体制の不備で移植を見送られた患者がいれば、他の病院の患者に回ることになる。臓器移植を行う病院は、報酬増額を、患者が移植の機会を逃さないよう有効に活用してほしい。
持続可能な仕組み作り
しかし、病院の努力だけに頼るのは限界がある。国が持続可能な仕組み作りを主導すべきである。限られた人員で移植医療を成り立たせるには、国が拠点となる病院を定め、患者も人材もそこに集約することが不可欠だ。いつでも移植ができるよう手術室やスタッフを確保する体制が必要である。
新技術の導入と研究開発
臓器移植を支える新技術の導入や研究開発も重要である。例えば、摘出した臓器の劣化を防ぐ装置が開発されている。脳死や心停止ドナーの腎臓については、効果や安全性が確認されたことを踏まえ、今月からこの装置を使って保存する場合に保険が適用されるようになった。肝臓や心臓への拡大も今後の検討課題である。



