警察官不在の交番でも安心 兵庫県警が「手話リンク」を全県660か所に導入
兵庫県警察は3月3日から、警察官が不在の交番や駐在所を訪れた聴覚障害者や発話が困難な人々との連絡手段を確保するため、スマートフォンのビデオ通話で手話通訳を介して会話できる「手話リンク」の運用を開始しました。このサービスは県内すべての交番、駐在所、警備派出所など約660か所で導入され、通話料は県警が全額負担します。
QRコード読み取りで手話通訳オペレーターと即時接続
「手話リンク」は一般財団法人「日本財団電話リレーサービス」が提供する通話サービスです。パトロールや事件・事故対応で無人となった交番などを聴覚障害者が訪れた際、机の上に設置されたQRコードをスマートフォンで読み取ると、手話通訳のオペレーターとビデオ通話が開始されます。オペレーターは同時通訳を通じて管轄の警察署に連絡し、必要な対応を促します。
これまで無人交番には警察署につながる専用電話が設置されていましたが、聴覚障害者らは利用できず、全日本ろうあ連盟が昨年7月に警察庁に対して手話リンクの導入を要望していました。この要望が具体化し、兵庫県警が全国に先駆けて本格導入に踏み切った形です。
聴覚障害者から歓迎の声「安心して利用できる」
2月中旬には神戸市中央区の生田署下山手交番でデモンストレーションが実施され、耳が不自由な兵庫県聴覚障害者協会理事の山本紋子さん(47)が参加しました。山本さんは「以前、拾った財布を届けに行った交番が無人で、どうすればいいか困った経験があります。これからは人がいる交番を探し回る必要がなくなり、大変安心します」と新サービスを歓迎しました。
山本さんは実際にQRコードをスマートフォンで読み取り、手話通訳オペレーターとビデオ通話で接続。オペレーターから警察に内容が伝えられる一連の流れを体験し、「非常にスムーズで分かりやすいシステムだ」と評価しました。
県の代表電話にも導入 福祉部や教育委員会でも利用可能に
兵庫県も同日から、代表電話などに手話リンクを導入しました。聴覚障害者らがパソコンやスマートフォンで県ホームページにある「手話で電話をする」ボタンを押せば、手話通訳者とテレビ電話で接続され、県庁内の各部署に問い合わせが可能となります。
代表電話に加えて、福祉部障害福祉課や教育委員会事務局特別支援教育課などの直通番号でも利用できます。事前登録は不要で、インターネット接続による通信料のみが利用者の負担となります。県は今後、運用状況を検証しながら、出先機関への導入拡大も検討していく方針です。
社会のバリアフリー化に向けた重要な一歩
この取り組みは、警察サービスにおけるアクセシビリティ向上と、多様なニーズに対応した公共サービスの実現に向けた重要な前進です。特に緊急時や困った際に、聴覚障害者らが迅速に警察と連絡を取れる手段を確保することは、地域社会の安全・安心の基盤を強化します。
兵庫県警の「手話リンク」導入は、他の自治体や公共機関にも影響を与える可能性が高く、全国的なバリアフリー施策の拡大につながることが期待されます。今後は利用者のフィードバックを収集し、システムの改善を図りながら、より多くの人々が平等に警察サービスを利用できる環境整備が進められる見込みです。



