避妊の失敗などによる予期せぬ妊娠を防ぐ緊急避妊薬、いわゆるアフターピルが、2026年2月に市販薬として販売開始されてから4か月が経過した。身近な薬局で迅速に入手できるようになり、多くの女性の安心につながっている一方で、価格や服用方法などをめぐる課題も浮き彫りになっている。
薬局でのプライバシー配慮と24時間対応
大阪市の森薬局日本橋店では、週に1~2人が緊急避妊薬を購入に訪れる。店内には仕切りやカーテンで囲まれた専用スペースを設置し、薬剤師が1対1で対応することでプライバシーに配慮している。営業時間外でも電話などで相談を受け付け、速やかな服用が必要と判断された場合には店を開けて対応する。
購入者からは、「身近な薬局ですぐに相談できて助かった」「医療機関の休診日でも対応してもらえて安心した」などの声が寄せられている。森薬局では、服用後のフォローとして、副作用や異常が生じた際に連携する産婦人科医を紹介している。経営者の杉浦丈仁氏は「服用後のケアや適切な避妊方法の情報提供にも注力している」と話す。
言いにくいことも「指さしシート」で伝達
購入を口に出しにくい人のために、薬の販売元がウェブサイトで提供するチェックリストを活用できる。印刷して記入したものを持参したり、スマートフォンに「購入を希望します」と表示した画面を見せたりすることで、意思表示が可能だ。
性暴力の被害が疑われるケースも想定されている。販売する薬剤師は対応研修を受けており、必要に応じて各地のワンストップ支援センターへの連絡や警察への相談を促す。店内に「相談したいことはありませんか」と書かれた指さしシートを用意し、言葉にできなくても伝えられるようにしている薬局もある。
薬剤師の役割と連携の重要性
和歌山県薬剤師会は1月に研修会を開き、産婦人科医や警察、支援機関との連携方法を学んだ。同会常務理事の太田力与子氏は「薬剤師が当事者に寄り添い、SOSをキャッチすることが重要だ」と強調する。
価格の高さと面前服用への抵抗感
販売されている緊急避妊薬は2種類あり、1錠7000円前後と高額だ。若者の性相談に取り組む助産師の神保ゆうこ氏は「費用を工面できずに諦める若者もおり、価格が高いと手が届きにくい」と指摘する。
ネクイノが1月に行ったアンケート調査(2118人)では、市販化について「安心感はあるが懸念もある」と回答した人が42%に上った。口頭での依頼への抵抗感、薬局の営業時間や立地による入手困難、薬剤師の面前で服用することへの不安などが課題として挙がった。
面前服用は悪用や乱用防止のために義務付けられているが、購入者の利便性や人権に配慮すべきとの意見もある。厚生労働省は一定期間後に、面前服用を含む販売方法の見直しを検討する方針だ。
望まない妊娠の実態と包括的性教育の必要性
アリナミン製薬が2月に行った調査(20~40歳代女性1000人)では、望まない妊娠の可能性があり不安になった経験が「何度かある」「一度ある」と回答した人が29%、緊急避妊薬の服用経験がある人は14%だった。
婦人科「さくま診療所」院長の佐久間航氏は「相手が避妊してくれないなど、女性がノーと言えない状況が根強い。互いを尊重する関係を築き、避妊について話し合うことが大切だ」と話す。
市民団体「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」共同代表の染矢明日香氏は「予期せぬ妊娠の不安に直面した人の苦しさを想像してほしい。市販化を機に、人間関係や人権にまで広げた包括的性教育や性暴力防止の取り組みを進めるべきだ」と訴えている。



