女子少年院のレース編みがアパレル商品に 社会復帰支援の挑戦「人は誰でも失敗する」
女子少年院のレース編みが商品に 社会復帰支援の挑戦

レース編みで社会につながる 女子少年院とアパレルの挑戦

東京都狛江市にある女子少年院「愛光女子学園」の少女たちが手掛けた繊細なレース編みが、アパレル企業の商品として世に送り出された。このユニークなコラボレーションは、非行を犯した少女たちの社会復帰を後押しする取り組みとして注目を集めている。自らが制作した作品が実際に商品化される経験は、彼女たちの未来への自信を育んでいる。

特殊詐欺事件から得た「達成感」

真剣な表情でかぎ針を動かす17歳の少女。彼女は特殊詐欺事件の受け子として加担し、約1年前に愛光女子学園に入所した。職業指導の授業でレース編みを学び始めた当初は、「手先が不器用なので苦手意識があった」と振り返るが、作品が完成するにつれて「達成感が味わえる」と語る。一目一目丁寧に編み上げていく作業は、根気強さと集中力を養う貴重な機会となっている。

「レースで立ち直るのか」という疑問から始まった協働

このプロジェクトのきっかけは、数年前に法務省内で上がった「レースを編んで非行少年が立ち直るのか」という疑問の声だった。当時、少年矯正課の企画官だった山本宏一・矯正局担当審議官は、現場と省庁内の認識のギャップを感じた。レース編みは多くの女子少年院で長年指導が続けられてきたが、その価値を社会に知ってもらう必要性を痛感したという。

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2023年、山本氏は児童養護施設の支援に取り組んでいたアパレル企業「シンゾーン」の染谷裕之社長に協力を要請。同年秋、染谷社長が初めて愛光女子学園を訪れた際、逃亡防止のためすべての扉が施錠されている光景に衝撃を受けた。「一見普通に見える少女たちが少年院に入った事情を考え、力になりたいと強く思った」と語る。

商品化への道のりと少女たちの変化

シンゾーンでは当初、「加害者が作った商品を販売してよいのか」という慎重論もあったが、現在では反対する人はいないという。昨年3月に続く2回目のコラボレーションでは、少女たちが編んだ約350枚のレースを使用。レースを花びらに見立てたオブジェや、ハンドタオル、巾着型バッグ、帽子などが制作された。

昨年夏には商品のデザイン画を描くワークショップも実施。17歳の少女は「すてきな商品になって、いまだに信じられない」と喜びを語り、「貢献できることがうれしいし自信になる。私たちに目を向けて、社会につなげようとしてくれる人がたくさんいると実感した」と顔をほころばせた。

「人は誰でも失敗する」という信念

染谷社長は「人は誰でも失敗をする」と強調し、「少女たちが社会に出る中で、自分や周りの人を信じるきっかけになれば」と願いを込める。山本氏も「少年院の入所者は『自分は社会にいらない存在なのでは』という思いが強い傾向がある。取り組みを通じ、自らの価値や可能性に気づいてほしい」と期待を寄せる。

シンゾーンは今年3月6日、表参道本店でコラボ商品4種類を発売。巾着型バッグとハンドタオルは既に完売し、他の商品も好調な売れ行きを見せている。来春には第3弾の商品展開も予定されており、持続的な支援の輪が広がりつつある。

愛光女子学園について

愛光女子学園は1949年、日本初の女子少年院として開設。非行を犯し、関東甲信越地方と静岡の各家庭裁判所で少年院送致の決定を受けた12〜22歳の女子を収容している。今年3月26日時点での在院生は25人。全国に42庁ある少年院のうち、女子のみを収容する施設は9庁に限られている。

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この取り組みは、更生支援の新たな可能性を示すとともに、社会全体が「失敗」を受け入れ、再出発を支える重要性を改めて問いかけている。